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保険の意味

 あなたは生命保険に加入しているだろうか。加入していたとして、保障内容をどこまで理解しているだろうか。そして、そもそも何のために保険を掛けているのだろうか。

 保険会社の広告のお陰もあってか、何となく保険には入っておいた方が良さそうな気がするものだ。会社勤めの人の多くは勧められるままに生命保険に加入しているだろう。私自身も例に漏れず新卒入社を期に生保に入った。当時は自分が死ぬことなど想像の範囲外で、守るべき家族もいなかったから入る理由は無かったはずだが、簡単に言えば騙された口だ。

 これを書いている現在があるということは、当然ながらこれまでに死亡保険金は受け取っていない。幸い大きな病気や怪我も無く、生命保険料はひたすら払い続けている。これまでに生保に幾ら支払ったは考えたくもない。こう書くと恨んでいるかのようだが、実はそんなことはない。
 貯蓄が無い中で、不意の事故や病気などに見舞われて家計収入が途絶えた際に、たとえ一時しのぎ程度だとしても家族が手にするお金があるということが必要だと思っていたからだ。

 結果論としては、保険料に費やすくらいなら投資や貯蓄に回した方が得だったのは事実だが、それは後になって分かることだ。どうなるか分からない部分のリスクをカバーすることこそが保険なのだから、保険金を貰う機会が無いことは嘆くべきことでも損なことでもなく、保険料を払った時点で保険を掛ける目的は達成されている。それは生保に限らず、自動車保険、火災保険や地震保険も同様だ。保険が有効か無駄かどうかは、保険でカバーされるはずのリスクそのものにではなく、掛ける側の経済的なリスクとリスク判断によって決まる。

 つまり、事故が起きるリスクに備えるのが保険なのではなく、事故が起きたときの経済的損失を埋めるのが保険なのでもない。事故が起きたときに経済的に立ち行かなくなるのを最低限回避するためにあるのが保険だ。
 だからもしあなたが有り余る金融資産を持っていて、家が火災で全焼したとしても何の問題も無いのであれば、火災保険を掛けるのは節税以外に大きな意味は無いかも知れない。

 注意が必要なのは、保険でカバー出来る経済的損失は限定的だということだ。保険の仕組みが悪いとか、保険会社が支払いを渋るとかいうことではなく、保険というものはもともと限定的な損失補填を目的としたものだからだ。そうでなければ今でも高い保険料がさらにバカ高くなって、とても掛けられなくなってしまう。

 保険があるから事故を起こしてもいいやとは誰しも思わないだろう。事故が起きてから保険で何でも請求してやろうというのも実は少し違う。本当は、どんな事故が起きたらどれだけの保障が必要なのかを自らが考えて、それに見合った保険商品を必要なだけ契約すべきだ。しかし私を含めて、それが面倒くさいから保険会社の言うままに契約してしまう。過度な期待ばかりが膨らんでしまう。そんな期待とは裏腹に、貰える保険金は微々たるものなのだろう。後悔しないうちに約款とやらを良く読んでおこうか。
 契約する側の責任を全うするのは想像以上に厄介だ。

おわり

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