身体に良い食べ物
身体に良い食べ物とはなんだろうか。
バランス良く食べなさいと言われるのは、身体がどうなることを期待してのことなのだろうか。
身体に良い食べ物を摂ることは、すなわち健康でいられるという理解で概ね間違ってはいないだろう。不健康なイメージとして思い浮かぶのは、太りすぎ、痩せすぎといった見た目で分かることもあれば、血圧や血液検査の値が高すぎ、低すぎの様に検査をしないと分からないものもある。共通しているのは何らかの基準値から大きく離れているかどうかで不健康が測られている点だ。「〜すぎ」はダメなのだ。
しかしここで問題なのが、どれくらいの値を不健康と呼ぶかについては、何となく決められている点だ。いやいや、医学的な裏付けがあるじゃないかと言うかもしれないが、その医学的裏付けこそがぼんやりしているのだ。
例えば、適正体重の目安として使われるBMIは22が良いとされているが、なぜ22かと言うと調査の結果BMIが22の人は最も異常値が少ないグループだったからだという。
では、身体に良い食べ物を食べればBMIが22になるのだろうか。BMIを22にするような食べ物が身体に良いものなのだろうか。
一般的に身体に良い食べ物と言われているのは、栄養面でのことだろう。骨や筋肉、血液などを作るのに必要なものと、それらを動かしたり体温を維持したりするのに必要なエネルギー、そして食したものを消化吸収するために必要なものの3つに分けられる。これらは、アミノ酸(タンパク質)、脂質、糖(炭水化物)、ビタミン(補酵素)、そしてミネラルによって作られる。これらを必要な分だけ摂取するのが重要だとされる。
難しいのは、必要な分量が人によって違う点だ。そして、必要以上に摂ることにはあまり歯止めが無いことだ。
逆に、身体に悪い食べ物の方が具体的に思いつき易い。砂糖が大量に入った甘いもの、人工的に合成された添加物、酸化したものが代表例だが、身体に良いとされるものを過剰に摂取することも身体に悪いのだから難しい。
現代はこうした身体に悪いものが溢れていて、そこから逃れるのは年々難しくなっている。
考えてみれば、高校生くらいまでの成長期には食物と健康についてあまり意識することが無い。健康的であることが重視にされるのは、生き物としての成長を終えた後に死期をなるべく先延ばしするための足掻きであって、子孫を残すための子育てに時間が掛かる人類の宿命なのだろう。
食と健康を気にして長生きしようというモチベーションの野生動物はいない。我が愛猫も飯をよこせと喚き散らすものの、それは長生きしたいとの訴えではなく、ただ単に食いたいからだ。
それを考えると、人は年老いてなお生きようとするからこそ身体に良い食べ物なぞを求めるのであって、長生きすることが誰のためにもならないエゴの表れに過ぎないのだとすれば、むしろ身体に悪そうなジャンクフードを無性に食べたくなることこそ正しい衝動で、生き物の本質をなぞった行動なのだろう。
おわり