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 103万円の壁が話題沸騰だ。
 所得税の扶養控除は1920年に、配偶者控除は1961年に導入された。これらは、同じ所得水準でも家族構成が異なる場合に応じた税負担の調整を行うことで、扶養する親族がいる家庭といない家庭との間で、実質的な生活水準の差を縮小しようとする目的で導入された。基本的には被扶養者に労働による給与所得が無いということが制度上の前提になっている。ただし、配偶者らに一定の所得があっても、その所得が生活を支えるための最低限の額にとどまる場合、納税者の税負担能力に大きな影響を与えないと見なされるので、被扶養者の所得は一定程度許されることになる。ここに今話題の壁が出来たわけだ。もっとも、配偶者に関しては配偶者特別控除によってなだらかな壁になっている。

 この壁が103万円になったのは1995年だというからおよそ30年。その間の物価上昇率がそれほど高く無かったので103万円のままだったところ、ここに来て物価上昇傾向であることを踏まえると、ちょっと金額バーを上げて欲しいと思う人もいただろう。その意味でタイムリーな話題だったのだ。

 しかし、この扶養控除のバーの金額をどうするかという議論は、扶養控除という制度が既得権としてそのままの形で永続することを暗黙の前提にしている。扶養する家族の有無による生活水準の差を縮小するという当初の目的が機能した時代と今とでは、時代が大きく違う。今では、扶養する家族がいる人だけ優遇されてズルいと言う人もいるくらいだ。
 個人的には子を扶養するのは当たり前に分かるが、妻を扶養するという言い方自体、少々時代錯誤だ。

 それでも貰えるものは貰っておけというのも分からなくないが、人口減少の影響は働き手の不足ということだけでなく、全員が一員として参画する社会にならないと日本は立ち行かなくなるだろう。
 壁の議論が一時的な減税政策に終わること無く、これからの社会に求められる扶養控除のあり方を構築するための切っ掛けになると良い気がする。
 そして、収入に対する一人あたりの税や社会保険料の負担率を下げることを目指して欲しいし、そのためには財政健全化以前に増え続ける国家予算を削減すべく、行政の無駄な仕組みを整える方向に注力して欲しいものだ。

おわり

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