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日本では高くなるもの
先日、Meta Quest2の値上げが発表されて衝撃を受けなかった人はいないだろう。
円安の影響で値上げされている海外製品は多いけれど、Quest2の値上げ幅は予想以上に大きく、円安だけの影響ではない。
Quest2の魅力は、PCに繋がなくても使えるスタンドアロン機であることと同時に、お値段以上の機能を備えていることだった。まあ、これまでの価格がお値段以上だったのだから値上げは仕方ないよねという寛大な方もいらっしゃるかも知れないが、時期が時期だ。
Quest2は販売開始から2年が経過した機種である。そろそろ後継機が出る頃かと期待していたユーザにとって、どうやら後継機は高いらしいという情報がちらついていたから、Quest2の値上げはダメ押しのようで痛手が大きい。
発売から2年と言えば、Quest2は技術的に陳腐化する頃だ。それでもそのことを全く感じさせない機種だったから、それはそれで凄いのだが、ハードウェアとしては何も変わらずに価格だけガツンと上げる手法は、日本メーカーが真似したくてもできないことだ。
日本メーカーの凄さは今や技術力ではなく、倒産するまで値上げせずに耐え抜く粘り強さだ。どうして行き詰まる前に何とかしないのだろうか。そんなにお客様が怖いのだろうか。ライバル会社が怖いのだろうか。それとも、値上げに値する製品を創れていないからだろうか。
プレステが販売されたとき、本体価格はとてつもなく低く設定された。それはハードの会社であったはずのソニーがソフトに舵を切った瞬間だった。本体は赤字で良いと割り切ったからだ。
安く売って長く儲ける。そんなやり方だろうか。
携帯やスマホも本体は安く売るということを長らくやっていた。プリンタなども同様のビジネスモデルだ。
この手法はある種の囲い込みでもあった。
まずはユーザを増やそう、儲けるのはそれからだ。というわけだ。
ところが、このやり方にも欠点がある。
ユーザを増やそうにも、ユーザとなり得る候補者がそれなりにいなければ駄目だ。元々使う可能性のある人の数が少なけば話にならない。
それに、初期の赤字を回収できるかどうかの賭けになる。その間にも競合他社との価格競争は続くから、消耗戦になってしまって、生き残ったとしてもあまり旨味が無い。
VRゴーグルの場合、Meta Platforms社が旧Facebookから社名を変えてまでメタバースに賭けているように見える反面、Quest2の値上げから見えてくるのは、マスの消費者は相手にしていないというメッセージだと錯覚する。
それは日本メーカーが得意な大量生産大量消費路線とは真逆で、世界の潮流であるサステナブルの匂いすら漂うように感じる。もちろんそれは我々の錯覚、幻想に過ぎない。
VRゴーグルもそうだが、ドローンにしても日本メーカーの声を聞かない。価格的に中国には敵わないからというのも一面では当たっていると思うが、そのようなパッと見ニッチな製品を開発することが日本企業には出来ないのだろう。
ブランド戦略と機能、デザインと性能といったパラメータを考慮した価格設定が出来ず、やたら機能を増やし、そのせいで性能を削り、挙げ句野暮ったいデザインになるからブランド付加価値を付けるに及ばない。これでは企画倒れどころか企画が通るはずもない。
こんなに値上げしたら誰も買えないじゃないか、というのがQuest2の値上げ報道で感じた第一印象であったのを隠すつもりはない。
しかし、冷静に考えてみれば、この製品、海外の物価水準ではこれでもまだ安い方なのだ。
アジアであっても都市部では日本の1.5倍、アメリカやヨーロッパでは日本の2倍の物価と考えれば、Quest2だって2倍になってもおかしくないない。それがこの価格で収まっているのだ。
海外から見れば高くない製品が日本から見て高すぎるのであれば、積極的に我々に売ろうとする海外メーカーは将来的にいなくなってもおかしくない。
おわり