ペットのマナー

　ペットショップが併設されているホームセンターに行くと、必ずペットコーナーを覗いてしまう。展示されている犬と猫を順番に見ていって、見た目だけでオスかメスかを当てるのが私の隠れた趣味だ。ついでに、値札を見る前に値段を予想もしてみる。雌雄も価格も、長年やっているとだいたい当たるようになる（と勝手に思っている）。

　コロナ禍でのペット人気は凄まじかったようで、一時は価格が爆上がりしていた。それでも展示されている犬猫たちは瞬く間に売れていって、次週訪れるともういなくなっているのも珍しくは無かった。
　あまりの高騰に、価格当てクイズで外しに外した私は、プロならレギュラーを外されるくらいの成績まで落ち込んだが、そんな中でも売れ残って大きくなってしまっている犬などは価格が下がるばかりで、ケージの中でのいじらしい様子に、いたたまれない気持ちになった。

　ここ最近は展示に群がる人の数はひと頃よりも落ち着いたように見受けられる。犬も猫も、ようやく普通の価格帯になって来て、手を伸ばせば何とか迎え入れることが出来そうな金額である。
　幼い頃から犬猫はじめ色々なペットと暮らし、今でも２匹の猫がいるくらいなので、ペットを愛でる気持ちは私も良く分かる。ペットが癒やしになることもあるし、ペットに励まされることもある。だから、家族の一員以上の存在だという人がいても驚かない。ペットは価格だけではその価値を計れないと言っても良い。

　比較的手頃な価格になると、可愛いさに釣られてつい買ってしまうことになりがちで、そんな人にとやかく言うつもりは無いが、飼うのであれば最後まで面倒を見ることはもちろん、近所迷惑にならないような配慮も必要だ。特に犬の場合は吠えることが多いし、毎日の様に散歩に出歩くことになるから、一時の可愛さだけで飛びつかないで欲しい。

　私が住む都市部の住宅地でも近年は犬を散歩する人を多く見かけるようになった。それに伴って、犬の散歩マナーがあまりよろしくない人を見ることも多くなり辟易している。

　まず真っ先に気になるのが犬の排泄の問題だ。昔の様に住宅地の近くに野原や草原があった時ならいざ知らず、家々が立ち並ぶ場所で排泄目的で散歩させるのは断じてやめて欲しい。糞を拾うのは良いにしても、尿に申し訳程度に水を掛けるだけで掃除した気になっているのは困りものだ。家の前でそれをやられた人の事はまるで考えていないのだろう。犬を飼う人は、飼い犬に自分の家で排泄させる訓練をするべきで、それが出来ないなら飼って欲しく無いとまで思う。

　次に気になるのが、伸びるリードだ。お犬様がさぞ可愛いのか、犬が自由に動き回れる様に、首輪に付けた紐が伸び縮みするアレのことだ。散歩をする時はリードを短く持って、犬を人間の左やや後方に付けて歩く習慣をつけて欲しいものだ。伸び縮みするリードでは犬をコントロール出来ない。他の犬に出くわしたり、不意に人に襲いかかったりした時に飼い犬を制御出来ないのであれば公道を散歩するのを諦めて欲しいものだ。
　飼い主と飼い犬が道路の両端に開いて向こうからやって来て、私の足が綱に絡め取られそうになっているのにも関わらず、笑ってやり過ごそうとするのは腹立たしいだけでなく本当に危険だ。

　そしてもう一つ気になるのが、スマホに首っ引きで散歩をしている人が多い事だ。リード問題と同じく、それでは犬が制御出来ないし、何より犬が可哀想である。犬を愛でる気が無い様にしか見えない。散歩をする時は犬の様子を良く観察することが犬にとって大切なことだと思っている。愛情を持って世話をする気が無いのなら飼わないで欲しいものだ。
　加えて言えば、子犬の可愛さに抗うのがいかに難しいかは良く知っているが、小学生の女の子が一人で秋田犬に引きずられるようにして散歩しているのを見ると、怖くて遠回りしたくもなる。大きくなる犬は覚悟を持って飼って欲しい。


　きっとどんな飼い主でも愛情を持って飼っているのだろう。しかし、ただ一緒に住んで餌を与えて散歩に連れ出せば良いのではない。可愛いかわいいと甘やかせば良いのでもない。飼い方は人それぞれだというのも分からなくないが、人が密集している都市部で動物を飼うには、犬の躾が欠かせないということを肝に銘じて欲しい。犬のすることですから勘弁してやって下さいという態度はいただけない。
　念の為言っておくと、私は犬嫌いではない。犬を連れている傍若無人な人が嫌いなだけだ。

おわり