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日本のお米を考える🌾

私の地元はかなり田舎で、田んぼがたくさんある。でも、子供の頃より明らかに減っている。(田んぼ自体が減っているのではなく、何も植えられていない田んぼが増えている)

令和に米不足が騒がれたが、このままだったらますます足りなくなるのは必然。いったい何が起こっているのかを調べてみる。

「令和のコメ騒動」とは?

2024年の夏にスーパーの棚からお米がなくなり、「令和のコメ騒動」であると騒がれた。

お米は秋ごろに収穫され、9月から新米が流通する。そのため、その直前の夏の終わり頃はちょうど端境期(はざかいき)であり、前年の9月から貯蓄されていた米がそこをつき、新米の流通を待つ状態になる。

そのため、農林水産省は8月2日の会見で以下のように説明した。

・令和6年6月末の民間在庫量は、平成11年以降最低水準になっているが、米の需要は年々減少傾向にあり、年間の需要量に対する在庫量の比率は平成23年や24年と同水準である。
・新米の出回りまでに必要な在庫水準は確保されており、逼迫している状況ではない。

https://www.maff.go.jp/j/press-conf/240802.html

そもそも、日本では、米の需要量が減少傾向にある。近年は8〜10万トンのペースで減少しており、農林水産省はそれに合わせて生産量の目安を提示してきた。

https://www.maff.go.jp/j/council/seisaku/syokuryo/210226/attach/pdf/index-36.pdf

需要量に合わせて生産してきたお米が、2024年の夏に足りないように見えたのはなぜだろうか?令和のコメ騒動の原因として以下のようなことが挙げられる。

(1)2023年の酷暑によるコメの品質低下
2023年の酷暑により、2023年産のお米(2024年に流通)は品質が悪かった。
コメ卸は、玄米を仕入れて精米をして販売するが、歩留まりの低下を見越して多めの調達を行っていた。(歩留まりが低下すると、同じ量の玄米を仕入れても、精米して販売できるようが減ってしまうため)

(2)地震や台風などに備えて買いだめされた
2023年の8月に出された南海トラフ地震の注意報や、お盆前後の台風によって、前もってお米を買っておこうとする消費者が増えた。

(3)インバウンドの急増
外国人観光客による需要が増えたことも、コメ騒動の原因の1つと考えられる。
ただし、これについては、農水省によると影響は3万トン程度に過ぎないとのこと。

日本の減反政策

日本では、1960年代半ばからコメが余るようになっていた。過剰な生産でコメの価格が下がるようなことがないように、1971年(昭和46年)以降、減反政策によってコメの生産量を減らし続けてきた。

実施内容は以下のとおり。

  • 農家は政府が設定した生産目標に基づき、生産調整に参加するか選択できる。参加農家には補助金が支給。

  • 水田で、大豆や飼料用米などの他作物を生産することも奨励された。

減反政策は2018年に廃止された。しかし、現在でも農水省は生産量目安を提示している。コメの需要量は、日本の人口減少やコメ離れの影響で年々減少していくことが予想されているため、それに合わせて目安も減少し続けている。

備蓄米の制度

災害や凶作などの緊急時に備えるため、政府が米を保管する仕組みが1995年に制度化された。備蓄米制度である。

備蓄量は約100万トンで、毎年20万トン程度を政府が買い入れている。保管の期間は5年間で、それを過ぎたコメは飼料用として転用する。

制度の硬直性

備蓄米制度はあるものの、2024年の夏には備蓄米の放出はなかった。それ以外にもお米の生産や流通に関連する制度はあるが、どれも柔軟性に欠けており、緊急時に対応できないことが問題視される。

(1)輸入制度
コメは政府が管理する「主要食糧」として扱われており、輸入は「食糧法」に基づき、事前届出が必要。さらに、20トン以上の精米を販売する場合は、農林水産大臣への届出が必要。

(2)用途を限定したコメの厳格な管理
コメは「用途限定米穀」として分類される場合がある。加工用米、新規需要米(飼料用や米粉用など)、輸出用米など、用途ごとに厳格に管理される。
用途外の使用は禁止されている。

(3)輸出制度
米を輸出したい場合、生産者は6月までに「輸出計画書」を提出する必要がある。輸出用米は、生産数量目標から外れて生産される。
輸出用米を国内主食用に転用する場合、代替となる輸出用米を1年以内に確保する必要があり、その手続きは煩雑。

農政トライアングル

日本のお米に関連する制度や政策は全て、「お米の価格を下げない」ことに紐づいている。

その「高米価農政」の背景には、農政トライアングルと言われる3者の結びつきがある。

  1. JA農協(=兼業コメ農家)

  2. 農林水産省

  3. 自民党農林族議員

この3者は相互依存的な構造を持つ。

  • JAは多数の農民票を取りまとめて農林族議員の当選を支援

  • 農水族議員は政治力を使って、農水省に高米価や農産物関税の維持、農業予算の獲得をさせる

  • 農水省は予算獲得のために農林族議員の政治力を利用する

  • JAは高米価施策や減反政策で維持された零細農家の兼業収入を預金として活用し、大規模な金融機関として発展

農政トライアングルの関係によって、国民全体の利益が蔑ろにされ、3者の利益が優先される可能性がある。実際、食料自給率の向上や、食料安全保障といった目標と実際の政策が矛盾している。

食料自給率についてEUと比較

食料自給率について、日本とEUを比較してみる。

日本の食料自給率は1961年から現在までに、78%から38%に半減した。一方で、フランスは99%から125%に、ドイツでは67%から86%に上昇している。

1960年代ごろに、農産物の供給過剰が起こったことは、日本・ドイツ・フランスに共通である。

日本では、国内市場の縮小に合わせてコメ生産を減少させた。一方でEUでは、生産を拡大し、過剰分は補助金付きで輸出をした。結果EUでは食料自給率は上昇し、農産物の輸出国となった。

生産の効率化のために

コメは零細兼業農家が生産している場合が多い。しかし、小規模な稲作では生産コストが高い。

例えば、0.5〜1ヘクタールの田んぼと、15〜20ヘクタールの田んぼで米60kgを生産する場合、生産コストはそれぞれ2万円以上と、1万円強程度で、2倍近くの差がある。生産コストの低い15ヘクタール以上の農地で米を生産する農家は全体の1.7%程度である。

そして、日本のコメ農家の95%が赤字になっているという状況がある。

コメの生産の効率化を図るためには、大規模化が必要不可欠。

終わりに

いつでも安心してお米を食べられるようにするには、柔軟性に欠ける諸々の制度を改革する必要があると思った。

2023年のお米は品質が悪かったとはいえ、生産量自体は目安通りだった。それでも、コメ不足になってしまうようであれば、今後異常気象やその他の原因で突然コメの生産量が大きく減ってしまった場合に全く対応ができない。

そもそも、米を生産している農家の95%が赤字ってどういう状況だろうか?必要不可欠な仕事をしている人ほど儲からない感があるのはこの世のバグだと、私はいつも思っている。

終わり!

参考資料

日本のお米関連の記事を調べようとすると、以下の人物の記事ばっかり出てくる。この方、思想が強そう(?)だから多少差し引いて考えたほうが良いのかもしれない。農政トライアングルとかも、最近はそこまで相互依存的ではないかもしれない…。(知らんけど)

日経新聞の記事もだいぶ参考にしました。

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