⑤ 低学年のゴールとしての「順序」
③で述べた以外の論理的順序も教科書から読みとれます。
2年下『ともだちをさがそう』からは「大きなこと(大概念)→小さなこと(小概念)」という論理的順序が読みとれます。この教材では、事柄を説明するには、まず大きさや形・色などの大きな情報を先に示し、その後で模様や装飾などの小さな情報を示すと効果的であるということを指導することになります。目の前にない事物についてわかりやすく説明するための「順序」について教える教材であると言えるでしょう。
マガジン「論理的思考・表現の在り方(「順序」とは何か編)」において論理的順序の中の対応的関係については以下のようなものがあると述べました。
ア 原因から結果へ(結果から原因へ)
イ 主要と付加(付加と主要)
ウ 全体と部分(部分と全体)
エ 一般と特殊(特殊と一般)
オ 外見と機能(機能と外見)
「大きなこと(大概念)→小さなこと(小概念)」という「順序」は上記のイとウのことであると言えます。低学年では細かく指導するのではなく、総合的に単純化したほうがわかりやすくなります。
しかし、よくよく見てみるとこの論理的順序はすでに1年生の教材に用いられています。『しらせたいな、見せたいな』は飼育している小動物の観察文を書くという教材です。ここでは、体の色→目→鼻→ひげの順に外見上の情報を書いています。これも「大きなこと(大概念)→小さなこと(小概念)」という論理的順序と言えるものでしょう。
また、『これは、なんでしょう』はクイズを作るための教材です。クイズは、わかりにくいものから順にヒントを出していきます。例えば学校の時計ですと、まるい→いつもうごいている→すうじがかいてある→じかんがわかる、となるでしょう。この順序は、「大きなこと(大概念)→小さなこと(小概念)」の逆となる「小さなこと(小概念)→大きなこと(大概念)」であると言えます。
また、③で時間的な順序として示した『馬のおもちゃの作り方』も、作る順番は確かに時間的な順序なのですが、その順番の事柄(内容)は「大きなこと(大概念)→小さなこと(小概念)」となるものです。なぜなら、例えば装飾や色塗りは最後にやるべきものでありはじめにやってしまっては失敗してしまうのです。部品を切り抜く場合も、体全体をまずは切り取って余ったところからその他の部品を切り取らなければなりません。教材は、つなぎ言葉などは本質ではないのです。それらにとらわれず、内容を見なければならないのです。
「見てわかること(外見)→見てわからないこと(機能)」と「大きなこと(大概念)→小さなこと(小概念)」という2つの論理的順序について述べてきましたが、この2つの「順序」を併せて用いるとよりわかりやすい表現ができることを教える教材もあります。
2年『あったらいいなこんなもの』は、自分の「あったらいいな」と思うものをよりよく相手に伝えることが目的となります。このよりよく伝えるため工夫が説明する事柄の「順序」を考えることになります。
この事柄の「順序」については、大きくは「見てわかること(外見)→見てわからないこと(機能)」で配列するのですが、「見てわかること(外見)」に関する事柄はさらに「大きなこと(大概念)→小さなこと(小概念)」の順に配列にすることになります。
このように、2年生後半にはかなり高度な「順序」を使いこなす能力が育成されることになります。