高等学校の国語の授業 論説文編② 「情報の扱い方に関する事項」における推論指導
「現代の国語」「論理国語」ともに、「知識・技能」の項に「情報の扱い方に関する事項」が新設されました(小学校及び中学校の国語科においても新設されています)。
この事項について、学習指導要領解説国語編(以下、解説と記す)には以下のような記述があります。
話や文章に含まれている情報を取り出して整理したり、その関係を捉えたりすることが、話や文章を正確に理解することにつながり、また、自分のもつ情報を整理して、その関係を分かりやすく明確にすることが、話や文章で適切に表現することにつながるため、このような情報の扱い方に関する「知識及び技能」は国語科において育成すべき重要な資質・能力の一つである。
『水の東西』指導においては、前述したような教材内容の表面的な捉えから発展的に内容を深めさせていくようなものではなく、まずは教材内容を「正確に理解する」ために書かれている「情報を取り出して整理したり、その関係を捉えたりすること」が大切になるのです。
「情報の扱い方に関する事項」は、「情報の整理」と「情報と情報との関係」の二つの系統で示され、「情報の整理」系統の中に「ウ推論の仕方を理解し使うこと」が明示されました。この「推論の仕方」について、解説では、
推論の仕方について理解し、様々な状況において自分の考えや立場を明確にすることができるようになることを示している。推論とは、ある事実を基に未知の事柄を推し量ることであり、推論の仕方には演繹的な推論と演繹的ではない推論(帰納、仮説形成など)があると考えられている。
と示されていいます。
教材内容を「正確に理解する」ためには「情報を取り出」すことがまずは必要になります。しかし、その取り出された情報は並列できるものではありません。重さや質が違うのです。『水の東西』のような論理的な文章とは、筆者の主張が論証されている表現のことを言います。そして、この論証とは様々な形式を持つ推論が効果的に組み合わされ積み重ねられたものとなります。
ですから、「ある事実を基に未知の事柄を推し量る」と定義される推論について確実に理解をしていないと、どの情報が「事実」であるのかどの情報が「未知の事柄」であるのか整理がつかないことになってしまうのです。
よって、「推論の仕方」の指導は教材内容を「正確に理解する」ための基盤となる指導であると言えるのです。