高等学校の国語の授業 論説文編① 「現代の国語」「論理国語」と『水の東西』
このマガジンは、すでに公開しているマガジンに書かれている内容の理解を前提として書いたものです。必ず、マガジン「論理的思考・表現の在り方(構造編)」「同(内容及び実践編)」及び「小学校の国語科の授業 説明文編」「中学校の国語科の授業 説明文編」を読んでからこのマガジンをお読みください(可能であれば「小学校の国語科の授業 理論編」もお読みください。
2022年度に完全実施となる学習指導要領では、共通必履修科目として「現代の国語」が、選択科目として「論理国語」が創設されました。
この新科目の創設は、2016年度の中央教育審議会答申「幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について」で指摘された現在の高等学校国語科の課題である「教材の読み取りが指導の中心になることが多」いということを受けてのものです(この「教材の読み取り」については「教材への依存度が高く、主体的な言語活動が軽視され、依然として講義調の伝達型授業に偏っている傾向」があると具体的にその姿が示されています)。
現在の高等学校における論理的な文章教材として、『水の東西』はその代表的なものだと言えます。指摘された課題を『水の東西』に当てはめれば、「鹿威しと西洋の噴水との比較」から二項対立の図式を読み取らせ、そこから比較文化論に話題を広げていって国際社会で生きるための教養を深めさせていくような指導となるでしょう。
このような指導は、すぐに教材から離れて教師から知識の教え込みのような流れとなるため、「教材への依存度が高く」「講義調の伝達型授業に偏っている」という姿につながっていると言えます。
『水の東西』は、新科目となっても引き続き教材として掲載されていくものと考えられます。この教材を新科目において取り扱う場合、どのような指導の可能性があるのかを考察することが本マガジンの目的となります。