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札幌の朝

朝6時、他人の目覚ましで起きる。札幌での2泊はコストを抑えてドミトリーにした。四人部屋。1泊2700円。なかなか寝付けなかったが、夜中、家で寝てると錯覚して、大きく放屁してしまった。やってもうたがなと思ったが、しゃあないやんと思うことにしてまた寝た。

カーテンの隙間から窓の外を見ると既に明るかった。荷物をまとめて宿を出た。バスで大通り駅近くへ。コインロッカー(電子マネー決済、コイン不要がありがたい)に荷物を預けようとした時、ふと、髭剃りたいな、と思い、電動髭剃りを探したが、見つからず、宿に忘れて来たことが判明。愕然。息子から誕生日のプレゼントでもらった大事な髭剃り、どこかでまた宿に戻るしかないが、まずは予定通り円山に向かうことにした。

大通り駅から東西線に乗って円山公園で降りる。降りた後、そうだ、今日は地下鉄一日乗り放題のドニチカの切符が使えたんだということに気がつき、何で大通り駅から乗る前に思い出さなかったんだと自分を少し責めようと思ったが、それは意味ないのでやめた。そして迷わず、チケット販売機で520円のドニチカを買った。要するに、土日と地下鉄をかけとる訳やね、よー考えはったなと過剰に感心するふりをしたりしなかったりして、歩き出した。

向かう先は、円麦、という人気の美味しいパン屋さん。7時からあいてるが、開店から並ぶので自然と小走りになる。7時35分に到着した時には既に10人くらいが並んでいた。私の後に並んだ年配らしき夫婦が、もうパンなくなってしまうんじゃ無いの?順番きたら売り切れになってるかもしれんよ、このまま並んでる?などと悲観的なことばかりいわはる。聞いてると、そやな大丈夫かなと思い始めてくるが、心配してしゃあないやんかと思い直し、読みかけの本を開いて続きを読み始めた。

待つこと35分、ようやく自分の番が来た。お目当てのあんぱんはまだあった!(良かった!)。クロワッサンとおからサンドも(昨年家内が絶賛していたことを思い出し)購入し、袋に入れてもらった。しめて751円。とにかくあんぱんが買えたことに満足し、そのまま北海道神宮へと向かった。

神宮に隣接している円山公園内の気温計は24.8度を差していた。東京は30度を軽く超えているだろうこと思い、涼しく爽やかな空気を思いっきり吸った。坂の途中にある鳥居をくぐり、懐かしい神宮の空間へ。手水舎の冷た水で両手と口を清め、正面の階段を登る。門をくぐり、一直線に進み、参拝した。約一年振り。やっぱりこの何とも言えない空気感は何なんだろう。すっと一陣の風が吹き抜けていくようなこの清々しさ。しばらく境内をゆっくりと歩き、新鮮な空気を体全体で吸収した。

次に向かうは、宮の沢通りに面したスターバックス。2階の大きな窓から円山公園を眺めることが出来るお気に入りの席がある。昨年はその席で朝の熱いコーヒーを飲みながら、司馬遼太郎の新史太閤記を夢中で読んでいた。

大きな鳥居をくぐり、振り返ってお辞儀をした後、円山公園内を歩きながら、リュックから円麦のあんぱんを取り出し、一口かじった。我慢出来なかったのだ。柔らかなパン生地。甘さ控えめだがそれでいて口の中に広がるあんこの甘さがしっかりと持続する。深いなぁ、やっぱり上手いなぁ、と思わず顔がにやけてしまう。一口だけと思っていたが、無理だった。もう一口、もう一口と、ほおばるたびに口の中に広がる幸せ。時折、爽やかな風が吹く静かな公園を抜ける前にはしっかり完食していた。

通りを足早に渡ってスタバに着いた。土曜日だし混んでるかなと思っていたが、思いのほか空いていた。頼んだドリップコーヒーを受け取り、期待を込め、ゆっくりゆっくり階段を上りきると、その席は静かに私を待っていてくれた。

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