本部のSTARBUCKS
沖縄本部のスタバは猛吹雪だ。人間の形をした氷の化け物が深雪の中を泳いでいるようであった。
窓際の席に座り、新田次郎「八甲田山死の彷徨」の世界に入り込んでいる。熱いコーヒーを口に含みゴクリ飲み込むと現実に戻って来れるが、まだ鼓動が速い。本を小さなテーブルに置く。眼前には穏やかな本部の海が広がっている。テラス席で日焼け止めを塗っている女子もいる。ほぅ〜と一息ついて少し酸味のあるコーヒーをまたゆっくり口に含む。それにしてもこの本の何という臨場感。グイグイと引き込まれていく。極寒の地、腰まで雪に埋もれ身動きが取れなくなる感覚。焦り、苦悩。そして絶望。
何も沖縄に来てこの本を読まなくてもと思うが、ひょんなことからそうなった。で、そうなるともう止まらない、止められない。また、ゆるりと本を手に取り、活字に目を落とす。スタバ内のBGMが静かに消えてゆき、室内の温度が徐々に下がっていくのだ。