がらくた(2006.02.10)
図工室の前にはたくさんの水道が並んでいた。そこから数台しか置けない駐車場が見える。決められた絵を書く事から逃げ出して、誰もいない廊下へ隠れる為に抜け出したが、それも退屈だったから図工室に戻った。
図工室の窓から見える景色はグラウンドだ。つまんないパレットとバケツを洗いながら外を眺めると子供達の元気に走り回る姿が見える。
俺も走りたい。あのゴールにシュートを決めたい。
だけど置かれた状況は、白紙のままの画用紙を提出し、汚い水道から窓を眺めてるだけの自分。
廊下を少し抜けるとあからさまな防音ドアの向こうに音楽室がある。ピアノが一台置いてある。黒板には五戦が四列ほど引かれている。退屈な笛を吹きたくないから、ほぼシカト。
自分の教室に戻ったら、たくさんの居場所があった。
僕は窓の縁の上に座るのが好きだった。退屈な話に花を添えてやるのも好きだった。
だからみんなが窓に寄ってくる。
優越感に浸りながら、ただ時間が過ぎてくのを待った。
マセた女子が給食の割烹着を忘れた僕を激しく怒った。面倒くさいから反省したフリをした。
男子はSMAP×SMAPの話とNBAの話をしている。
こんな太陽の高い日中の午前と午後はいったい大人は何をするんだろ?
自由帳に書いていたのは「替え歌」「切り取った生首」「遺書」「サイン」
で、またこんな太陽の高い日に、僕は絵を描いている。
架空の生物。ライオンに憧れて、ライオンになりたくて、ライオンじゃないけど、ライオンのような。
太陽が高い。
あなたが好きです。
お前嫌い。
強いと思われたい。
そんながらくたが記憶の片隅にあった。
お前に教えてやる。大人になったら、太陽の高さにすら気付けないもんだよ。
あんたが思ってた程、大人って強くないんだよ。
2006.02.10
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