
世界が広がる読書生活★石原・倉林『基礎英文のテオリア』(Z会)
今回は石原健志・倉林秀男『基礎英文のテオリア』(Z会)を紹介します。
この本の特徴は「解説が詳しすぎる」ところにあります。人によっては「細かすぎる」「くどい」などの感想もあり得るくらいのものです。
例えば「名詞を前から修飾する要素の語順」の説明では
冠詞・限定詞 副詞 形容詞 名詞
の順であることを明記した上で,例題(並べ替え問題)
a / tower / tall / very
の解説を品詞の分析から始めて,なんと5行に渡って展開しています(p.19)。
「何をごちゃごちゃ言うとんねん。こんなんa very tall towerに決まってるだろ!」と発狂する人も出てくるでしょう。私が高校生相手の授業でこの問題を解説するとしたら(『テオリア』シリーズは高校生向け学参です),次のような感じになります。
a very tall towerしかありえないですね。
このあとで次のように付け足しはしますけども。
この語順がピンと来ない人は10回唱えて暗記してください。これは理屈ではなく慣れの問題です。「そういうもの」として覚えてください。
伊藤和夫は一連の著書の中で頻繁に「英語は理屈半分,慣れ半分」と言っています。私の重心はやや「慣れ」のほうに寄っている感じです。
しかしこの「そういうもの」として覚えるのが苦手な人がいるのも事実です。
名詞を前から修飾する要素の語順は「冠詞・限定詞 副詞 形容詞 名詞」です。
のように抽象化したものを言ってもらいたがる学習者も(それほど多くはありませんが)います。事細かに言葉で説明されるのを求める学習者もいます。そうした方々には救世主となるでしょう。
この本は指導者(特に指導歴の浅い人)は必読だと考えています。若い先生は「なぜ生徒たちはこんな簡単なことがわからないのか」と頭を抱えることがよくあるかと思いますが,そうした「そんなのあたりまえじゃん!」を細かく言語化しているのが『基礎英文のテオリア』です。目の前で困っている生徒が何に躓いているのかを発見する手引きとして活用できる一冊です。
また、この本から「引き算」することで授業スタイルを構築するネタ本としても有効でしょう。(そこまで説明しなくてもよくない?)と感じるところを削っていくのです。
皆さまからのお布施はありがたく頂戴いたします!