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受験英語「英文法(品詞と文型)」の学習法・指導法

こんなツイートが流れてきました。

この方に限らず,ここ四半世紀くらい,高校生・受験生の多くは「品詞と文型」に苦手意識を通り越して嫌悪感を示します。

私は大手予備校の英語科講師ですが,教壇の上から講義するだけの人間ではありません。質問対応や個別相談,オリジナルの小テストを通して学習者の弱点とその原因を明らかにするよう努めています。

こうした姿勢によって,私はこの「品詞と文型」に対する嫌悪感の源泉はわかっています。ひとことで言うと,覚えるべきことを覚えていないのが原因です。

この「覚えるべきこと」は拙著『世界が広がる英文読解』(岩波書店)にまとめています。

その一部を簡潔にまとめて以下に示します。

名 詞 ⇒ SかOかCになる
形容詞 ⇒ 名詞修飾またはCになる
副 詞 ⇒ 名詞以外を修飾

Sになるのは? ⇒ 名詞だけ
Oになるのは? ⇒ 名詞だけ
Cになるのは? ⇒ 名詞か形容詞

「品詞と文型」に苦手意識がある人は,上に示した6行を覚えていないケースが大半です。これらを頭に入れずに「品詞と文型」を重視する先生の授業を受けてもチンプンカンプンになるのは間違いありません。

また,各文型の「基本訳」も暗記する必要があります。

SV     「SはVする」
SVC    「SはCである/になる」
SVO    「SはOをVする」
SVO1O2 「SはO1にO2を与える」
SVOC   「SはOをCにする」「SはOをCだと思う」

以上の囲み部分を暗記すれば「品詞と文型」に関して苦手意識はなくなります。それどころか論理的に正しく英文を読めるようになり,書けるようになり,受験英語で圧倒的に有利になります。

ただ,これは典型的な「言うは易し」案件です。上の内容を簡単に記憶できる学習者は少数派です。「来週までに暗記しておくように」で済ますことはできません。

以下,私が「品詞と文型」を導入するにあたってどのような授業をしているのかを具体的に示します。


私の授業では「受験英語の見取り図」という1枚のプリントを活用しています。上にまとめたことに加えて「句・節」の基本的な考え方を豊富な用例と共にまとめたものです。

この「見取り図」を完全に頭に入れれば,難解な参考書と言われる伊藤和夫『英文解釈教室』や,大学入試レベルをはるかに超えた北村一真『英文解体新書』シリーズも読みこなせるようになります。

高校1年生の英語があまり得意ではない,または英語が嫌いな人が集まる授業では,テキストを「見取り図」を参照しながら学んでいくスタイルを採用しています。

「形容詞は文中でどんなはたらきをしますか?」

「主語になれる品詞は何ですか?」

「SVOCの基本訳は?」

このような質問を連発し,ひとりひとりを指名して答えてもらうのですが,その際,

【講師】見取り図を見てわかることしか聞かない
【生徒】見取り図をカンニングして答えてもよい

というルールを採用しています。これは我ながら画期的です。これらのルールによって学習者の苦手意識をほぼゼロにできています。

10~20時間目の授業で,ほとんどの生徒は何を問われても「どこを見れば答えが書いてあるか」を暗記します。30~40時間目で,何を聞かれても「見取り図」を見ないで回答できるようになります。


「品詞と文型」を採用するのであれば,このくらいの導入期間が必要だと思います。英文を論理的に読解することに苦手意識・嫌悪感を持たれないようにするには(こんなことはもう知っている[覚えている]はず)という学習者への過信を捨てることが重要だと私は確信しています。基本的なことは,何度も何度も,しつこくしつこく。

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不知塾と書いて「しらずじゅく」と読みます。 ソクラテスの「不知の自覚(無知の知)」を重視しています…

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