
なぜ英語の独学には「整序(並べかえ)問題」が最適なのか
英語の独学に最適なのは「整序(並べかえ)問題」です。「整序(並べかえ)問題」とは次のような問題です。

「整序(並べかえ)問題」が英語の独学に最適な理由は主に二つあります。順に説明しましょう。
まずは,これは英語学習に限らないのですが,何かを学ぶとき,勉強するときに最も大切なのは答え合わせです。正確な答え合わせによって自分ができること/できないことを明確に区別し,できないことをひとつひとつできるようにしていくのが学習の鉄則です。
英文和訳(英語を日本語に訳す問題)や英作文(日本語を英語に訳す問題)などの記述問題は正確な答え合わせを独力でするのは不可能です。これでは勉強になりません。よって,何かを独学するには記述問題は避け,記号問題を解くのがベターなのです。記号問題であればほぼ確実にきちんと答え合わせができますから。
記号問題であれば「空所補充問題」でもいいじゃないかと思うかもしれません。次のようなものです。

「空所補充問題」の最大の欠点は,何も考えずに選んでも25%の確率で正解してしまうことです。これでは勉強になりません。
「整序(並べかえ)問題」であれば,先に紹介したものには選択肢が6個ありましたから,6!で720通りの回答があり,出鱈目に解いて正解してしまう確率は約0.14%です。
「整序(並べかえ)問題」が英語の独学に最適な理由の二つ目は,英語と日本語の語順が大きく異なることです。下にいくつかの例を示します。

私たち日本語話者が英語を習得するためには英単語や英熟語を暗記するだけではなく,日本語とは全然違う英語の語順に慣れ親しむ必要があるのです。
「語順」とは単語を並べる順序のことです。また,「整序」とは「順序を整えること」です(『精選版 日本国語大辞典』)。
日本語とは大きく異なる英語の語順(順序)に習熟するには「順序を整える」練習,つまり「整序(並べかえ)問題」を解くのが有益であることは言うまでもありません。
今から約10年前,衝撃的な本に出会いました。『越前敏弥の日本人なら必ず誤訳する英文』です(現在は【決定版】に新装されています)。
映画化もされて大ヒットしたダン・ブラウンの小説『ダ・ヴィンチ・コード』などの翻訳者として知られる越前敏弥氏による英文読解の指南書です。
収録されているインタビューで越前氏は塾講師のアルバイトをしていたときに「浪人時代に勉強した伊藤先生の教本をもう一度,ていねいに読みなおしました」と回想しています(ここでの「伊藤先生」とは伊藤和夫のことです)。そして
このときの読みなおしが,それまでの理解をより深めてくれました。特に『英語構文詳解』は浪人時代にはあまり役立たないと感じていたんだけれど,〈英語は左から右へ読む〉という伊藤先生の考えがいちばんしっかり説明されているのは実はこの本なんだと気づかされました。
と『英語構文詳解』を絶賛しています。
私はこのときまで同書の存在を知らなかったのですが,書店で手に取ってみて瞬時に(これはなんと素晴らしい本だ……)と感動しました。
この『英語構文詳解』をひとことで説明すると「整序(並べかえ)問題」で英語力を極限まで高める問題集かつ参考書です。伊藤和夫による「使用上の注意」にはこうあります。
形から英語を考える練習は従来「構文」の研究と呼ばれてきたが,そこでは内容的に難解な文章が例題として取り上げられるため,実際には内容や単語の難しさであるものが構文の難しさと錯覚され,学習が不十分なままに終ることが多い。基本の構文は読んで理解できるだけでなく,その約束に従ってみずから英文を作ることができて,はじめて学習が完了したと言える。本書はこの立場から。いわゆる「整序問題」を手がかりに構文を考えることを目標としており,内容上の難しさを意識的に排除することで,形態上の問題点に叙述を集中しえたと考えている。
この本に取り組み,熟読することで私は英語講師としての実力が何段階か上がったと考えています。そのくらいの本です。
ですが,ひとつだけ問題があります。それもかなり大きな問題が。現代の高校生・浪人生には難しすぎるのです。
恩師であり同僚でもある竹岡広信先生にこんな質問をしました。
「この『英語構文詳解』は本当に素晴らしいと思うんですけど,難しすぎて最上位クラスの生徒にしか薦められないのが残念です。これの前にやるとよさそうな,同系統の問題集はありませんか?」
竹岡師は即答でした。
「ない」
そうですか……。それは残念です……。
「ないからお前が作れ」
は?????
……とまあ,このような流れで生まれたのが『英文法基礎10題ドリル』です。
その後に「さらに前」として『英文法入門10題ドリル』も執筆しました。
英語の独学に最適なのは「整序(並べかえ)問題」であるというのがこの記事の主張ですが,具体的な教材としては
英文法入門10題ドリル
英文法基礎10題ドリル
英語構文詳解
この順番に取り組むことを推奨します。英語にある程度自信がある人も『入門』から始めてみてください。「このくらいは楽勝でしょ!」と思えるところから始めるのが勉強のコツです。
皆さまからのお布施はありがたく頂戴いたします!