対戦相手のミスを喜ばないべきか
「相手のミスを喜びたくない」と言っていたオリンピック選手がいた。確かにわかる。相手に失礼だし、相手のミスのせいで勝てても自分が強くなったわけではないので建設的ではない。
だが無理だ。喜ばざるを得ない。なぜなら、どこからミスでどこからミスじゃないかの切り分けは困難だからだ。
以下は金メダルを取った体操選手の葛藤だ。
お!相手選手が鞍馬で乱れたぞ!
うーんでも
これは相手のミスだ。よし、喜ばないようにしよう。
あ!相手選手が着地に失敗したぞ!
うーん、まぁこれもミスだろう。喜ばないでおく。
自分の実力でE難度の技を決めて優勝したぞぉぉぉ!!
しゃあ!これなら文句ない、喜ぼう!
‥いや待てよ、銀メダルの選手はE難度失敗してたな。ミスを喜んでいるといえば喜んでるな。
いやでもこれは喜んでいいでしょぉ、うーんでも、彼はE難度の練習あんまりやってなかったから練習配分をミスしてたかもしれない。
銅メダルの人は俺と違って両親は普通のサラリーマンみたいだから、遺伝子レベルで職業選択ミスってるかもしれない。
4位の人は俺と比べてだいぶ金銭面で苦労していた。親御さんのミスなのかも。。
5位のやつは良い奴みたいだけど、ちょっと怠け癖が治せてないこともミスと言えるな。
そうこう考えているうちに、彼は全ての勝利が相手のミスによる勝利に思えてきてしまった。
その日から彼は全く喜ばなくなり、成績も落ち、表彰台で喜ぶ人達を悪魔でも見るかのような目で睨みつけるようになったのだ。
さて、つまり、
「相手のミスを喜ばない」と言っている時の「ミス」というのは、社会通念上「分かりやすいミス」ということでしかないのだ。
また、自分が優勝した瞬間に喜ぶか、相手がミスした時に喜ぶか、のタイミングの違いでしかない。
つまり本質的には、自分の優勝も喜んでるし、相手の何らかのミスを喜んでもいるのだ。
これを厳密に切り分けることはできない。
であれば、スポーツに限らず、仕事も遊びも、みんな暗い顔でやっててもしょうがないので、相手のミスも素直に喜んでしまおう。
あいちゃんが相手がピンポン玉弾いた時「タァ!」ってガッツポーズしてたあのノリだ。
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