私はあなたのおばあちゃん〜ベトナム版「怪しい彼女」
予告編を見て面白そうだなと思ったものの、一般公開時に見過ごしてしまい、ようやくベトナム航空の機内で観ることができた本作。
70歳のおばあちゃんがとある写真館で写真を撮ると、20歳の娘に若返り、孫と一緒にバンドを組んで、スターへの道を駆け上がっていく…。ストーリーは他愛ないが、しかし、笑わせるところでは多いに笑い、泣かせるところではとことん泣かせてくれる本作はとても心地よい映画だ。
この映画は韓国映画「怪しい彼女」(2014)のリメイク版。中国や日本でもリメイクされ、それぞれヒットしている。なかでもベトナム版は原作を超える出来栄えとの声もあがっている。
主演はベビーフェイスで人気の歌手、ミウ・レー。姿かたちは20歳だけれど、中身は70歳という役どころ。ちょっと背を丸めてガニ股で歩き、おばあちゃんらしくズケズケものを言う「怪しい彼女」を演じているが、それがまたなんとも愛らしい。
ベトナムの70歳のおばあちゃんの人生には40数年前に終わった「戦争」が影をおとす。おばあちゃんが若返って最初にうたう歌は、戦後の一時期厭戦的であるとして政府によってその作品を歌うことが禁止されていたチン・コン・ソンの「美しい昔」。若者の間でのレトロブームも手伝ってか、南ベトナム政権下の文化の再評価という点も見過ごせない。
おばあちゃん役には優秀芸術家の称号を得たベテランのミン・ドゥック。その友人にはコメディ男優としても有名なタイン・ナムなど、ベテラン勢も好演。
日本ベトナム友好協会東京都連ニュース 2017年7月号掲載