秋の訪れを告げる「バインチュントゥー」の販売所
旧暦8月15日は中秋節である。今年は新暦9月10日。中秋節の1ヶ月前からバインチュントゥー、月餅の販売所がハノイの街の各所に臨時で設けられる。私の住むマンションの近所にも5、6軒並んでいる。
90年代、この時期にハノイに仕事で出張するとお土産にこのバインチュントゥーをいただいた。米粉・小麦粉で作られた皮の中に緑豆、ハスの実、ナッツ類、卵の黄身や豚の脂身などが入っていて、一片が20cmほどもある大きなものだった。一口食べるとお腹がいっぱいになるハイカロリーなお菓子だ。外国人には珍しいお土産になるだろうと、取引先の人たちが競って届けてくれるので閉口した。
最近ではこのバインチュントゥーも小型になり、一口サイズのものまで出てきた。餡も具材もチョコや抹茶味、ドリアンなどのフルーツ入りのものもあって、お菓子として洗練されたものになった。
最近では高級ホテルがそれぞれバインチュントゥーのセットを売り出す。ヒルトン・オペラ・ハノイではホテル特製のバインチュントゥーに限定醸造のワインをつけて1000万ベトナムドン、日本円で6万円で売り出した。以前ニッコーホテルが金箔入りの日本酒をつけて高額のバインチュントゥーセットを売り出したが、完売した。高級ホテルの月餅は得意先への「贈答用」に人気がある。
旅行業は景気回復にはほど遠く、月餅を届けにくる取引先もない。月餅が一個も届かない中秋節はちと淋しい。
日本ベトナム友好協会東京都連ニュース「ハノイからの手紙」2022年9月号掲載