Vol.8 Spinners / The Best of the Spinners
Spinners
The Best of the Spinners
(1973)
Motown
フィリー・ソウルとはフィラデルフィア生まれのソウル・ミュージックだそうで、豪華な生のストリングスと跳ねるようなピアノと陽気なブラス隊、そしてディスコ前夜のようなリズムが特徴。小沢健二の「LIFE」のような音、もしくは「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」のサントラに使われてそうな音楽と言うとわかりやすいかもしれない。
何度か書いているが、自分はこういったガチンコのブラック・ミュージックというものをほとんど通らずに来ているので、今現在こういった音楽を掘っていくのがとても新鮮で楽しくて仕方がない。新しい知識を得ていくのは、とても気持ちが良い。
このバンドというかグループは、「メリーの首ったけ」の終わりの歌で有名なThe Foundations(いずれ紹介予定)をSpotifyで聴いていた時に、オススメとして現れたことで知った。amazon然り、この機能は本当に便利。これ以前はどうやって知識を増やしていたかというと、雑誌なのだろうが、こういった古い音楽は自分が若い頃でも既にとても古い音楽であり、雑誌で紹介されていたとも思い難いので、ブラック・ミュージック愛好家の方々はどうやって知識を得ていたのかとても気になるところ。ヒップホップの雑誌にルーツとして載っていたのだろうか。
女性のような高音もなんのそので歌い切るスタイルのボーカルとコーラス隊、そして多幸感のあるアレンジはポップ・ミュージックとして超一流であり、無条件で楽しい気分になる楽曲が多い。なので、悲しい時、陽気な時などの、あまり頭を使わないでも良いような時に聴ける楽天的な音楽と言えるかもしれない。
本当はオリジナル・アルバムで順を追って聞きたいなと思っていたのだが、このベスト盤がとても安価で手に入ったので、まずはこちらから入門編として楽しみたいと思う。その他のアルバムもかなり安かったので、中古盤市場としてはお求めやすく購入できるレコードだと思う。
ちなみに、SpinnersとThe Spinnersと表記ブレが多く観られるのだが、イギリスにThe Spinnersという同名のバンドがあるので、本当はThe Spinnersだけれども、Spinnersと名乗ることもあるとか。
A1: Together We Can Make Such Sweet Music
とても穏やかなイントロで始まり、サビ・間奏と大きく盛り上がることはないが、確かにその役割を果たしており、どこか昔の海外ドラマの主題歌を感じる、一曲目に相応しい素晴らしい楽曲。ストリングスも低いブラスもとても効いている。
A2. It's A Shame
軽快なギターから始まるこのイントロは、きっと誰かがサンプリングしているにちがいない。ヒップホップなどは詳しくないので知らないがきっと。イントロの印象通り、曲を通して軽快な曲調で、大袈裟さとは無縁の、雨上がりなどには軽くスキップでもしたくなるような曲。
A3: I've Got To Find Myself A Brand New Baby
一瞬サビが、Travisの「Flowers In The Window」に似ているかなと思ったがきっと勘違いだろう。モータウンらしい曲でゴテっとし過ぎずキャッチーな印象。「Baby」を連呼する感じのブラック・ミュージックを聴くということ自体に、個人的には何か感慨深いものを感じる。
A5: We'll Have It Made
低音ピアノのイントロから始まり、ブラスが爆発するとても陽気な曲。強烈なシャウトも聴けるし、メロディーごとの緩急もあったりして、これまでの曲とは少々異なり、子供番組っぽさを感じる。
B2: My Whole World Ended (The Moment You Left Me)
オルガンとファンキーなベースラインがとても気持ち良い。ここでも「Baby」を聴けて嬉しい。間奏の弾むようなピアノも最高。一番好きとは言わないが、このベスト盤の中でも上位に好きな曲。
B5: O-o-h Child
先述の「Guardians of Galaxy」にも使われていた、The Five Stairstepsのカヴァー。珍しいところでは日本のバンドSatoaもカヴァーしている名曲なので、当然こちらのバージョンも悪いわけがない。オリジナルがとてもビッグ・プロダクションなイメージがあるのに対し、スピナーズのバージョンはもっと家庭的と言うと語弊があるが、地に足がついたというか、近所の楽器ができる仲良し連中と一緒に演奏したような、安っぽさともまた違う良さがある。
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このスピナーズは、今まで聴いたことがある名前だからや、聴いたことがある曲だからといった理由でなく、Spotify経由とは言え、自分で見つけたアーティストという感じがして、とても思い入れがあります。詳しい人にはど定番の方達かも知れませんし、どれほどの知名度かもわかりませんが。
このベスト盤で甘んじることなく、オリジナルアルバムも是非コンプリートしたいなと思ってます。レコード屋にいって、徒然に掘るだけでなく、目当てのものを探すというのも楽しいものです。ちなみに自分がずっと探しているレコードで、World of Twistの「She's a Rainbow(Fluke Remixes)」というシングルがあるのですが、レコード屋で観たことがありません。