キムラ知世

フリーランス美容師 【住所不定宇宙】勝手にエッセイ連載毎週火曜日更新 【35歳のセンス・オブ・ワンダー】 【帰省日記】

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フリーランス美容師 【住所不定宇宙】勝手にエッセイ連載毎週火曜日更新 【35歳のセンス・オブ・ワンダー】 【帰省日記】

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  • 住所不定宇宙

    勝手にエッセイ連載 東京都に生きる35歳のこと。

  • 書く習慣

    2023年と2024年の書く習慣1か月チャレンジです。

  • 帰省日記

最近の記事

【住所不定宇宙】木もれ陽がまぶしいということ

朝、目が覚めると同時にスマホを手にする。 いつもならジャンププラスのアプリを開いて火曜日のお楽しみであるダンダダンを読むのだけれど、今日は違った。 詩人の谷川俊太郎さんの訃報が私のスマホにも届いていた。 きっと多くの日本人が驚きの声をあげた朝だったに違いない。 もれなく私も「え」という声が出た。 今回、タイトルにお借りしたのは、 谷川俊太郎さんの「生きる」という詩の一節。 私はこの一節に思い出がある。 小学校6年生の国語の授業。 クラスの全員でこの詩を読むことがあった。

    • 【住所不定宇宙】寂しさ、が私にくれるもの

      35歳独身だ。 長らくパートナーがいないので、ひとりでいることに大変慣れている。 そんでもって大変楽しく過ごさせてもらっている。 ひとり映画も、ひとりラーメンも、ひとりプラネタリウムも、ライブの為のひとり遠征もお手のもの。 ひとりでこんな所行ったんですよ、こんなの食べたんですよと話していると、 寂しくないの?と聞かれることがある。 寂しくない。悲しくもない。 楽しすぎて怖いくらい。 こんなに自由でいいのかなって。 でも どんな時に寂しいと感じるかと聞かれたら、こう答

      • 【住所不定宇宙】蔵でひとり

        思い立ってひとり旅に出た。 ライブ遠征目的ではないひとりの旅はかなり久しぶりだ。 でっかい神社があって、東京から近くて、私が持っている旅エッセイや旅漫画に出てくる所。千葉の佐原に決定した。 サハラ、ではなくサワラ。 宿泊は愛読している「おひとりさまホテル」に出てくる「佐原商屋町ホテルNIPPONIA」にした。 このホテルは蔵や酒屋をリノベーションして宿泊部屋や夕食朝食会場にしている。それだけで心が躍る。 蔵というものを外から見たことはあっても入ったことはない。ましては泊まっ

        • 【住所不定宇宙】3分のイチも伝わらない

          思い出したいことがあって、昔の日記を読み返す。 たしかに自分の字で書いているのに、誰かの日記を盗み見ているような気持ちになる。日記というより、小説を読んでいるみたいだ。 自分のことなのに、どこか現実味がない。 高校生から社会人になるまでの期間は、毎日書く用の日記帳と、書くのがおさまらないときに追記用の日記帳があった。 B5サイズのリングノート。 3冊あるけど、どれも違う柄で統一感なんてまるでない。 追記用は当時の部活のこと、好きな人のこと、友人関係のこと、そして進路のことが

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        • 住所不定宇宙
          3本
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        記事

          【住所不定宇宙】好きなものは好きと、

          美容師になってから15年も経つと、お客さんと話す内容が20代だった頃と違ってきた。 いま1番多いなと思う話題は、「推し」についてじゃないかと思う。 そして「推し」の話をする時、人はほんとうに良い顔をする。子どもの頃、綺麗な石を見つけた時と同じような顔をする。 今思えば、20代前半の頃に「あのお客さん、話しやすくて良い人だな〜」だなんて、ぽやぽやと思っていたけど、それは決して私のコミュニケーションスキルが高いから話しやすいのではなくて、その方が話しやすいようにしてくれていたの

          【住所不定宇宙】好きなものは好きと、

          帰省日記/2024年10月13日~

          10月13日 最寄り駅の自転車置き場近くにススキがたくさん伸びていて、思わず写真を撮った。 新潟の秋が私を迎えてくれた。 他の季節にはここには何が咲いていたっけ。 今回の帰省も姪と遊ぶ予定だけを入れている。 一緒に遊ぶためのおもちゃを買っていったら、これ欲しかったやつだ!と言っていて、ホッとする。 これがけっこう難しい。 でも子どもなりに規則性を見つけたらしく、ここにくると口を開けるから待ってね、とか私にも教えてくれた。感心。 姪2人ともとても私に懐いてくれたようで、終始

          帰省日記/2024年10月13日~

          【住所不定宇宙】ご自愛ください

          仕事上、手紙を書く機会が多い。 手紙といっても長々と書くわけではなく、たいていが一筆箋で、文字数にすると200文字くらいか。 その限られた文字数の中にどう愛を落とし込むかが試されているようで好きだ。 近頃私が結びの言葉として一番多く使うのが、この「ご自愛ください」だと思う。 季節の変わり目だからご自愛ください、寒暖差もありますのでご自愛ください、感染症も油断できないのでご自愛ください。 ご自愛くださいっていい言葉だ。 いままでそう書いてこなかったのがもったいないと思うほど

          【住所不定宇宙】ご自愛ください

          【住所不定宇宙】そうだ、鮭を焼こう

          そうだ、鮭を焼こう、そう思った。 どこへも行かない、誰とも会わないと決めた休日がやってくる。 朝起きて顔を洗って、パジャマから部屋着に着替えて、髪の毛は頭のてっぺんでちっちゃいお団子にする。日焼け止めは付けるけど、メイクはもちろんしない。 録画してある最近始まった秋アニメを見て、気が済んだらBUMPOFCHICKENか米津玄師のライブブルーレイを見て過ごすと決めた休日がやってくる。 私なりの丁寧な暮らしだ。 仕事の帰りに立ち寄ったスーパーで、秋鮭、という文字が目に飛び込

          【住所不定宇宙】そうだ、鮭を焼こう

          【住所不定宇宙】

          心の住所が定まらない。 からだは東京都にあるけれど。 ときどき、 午前3時頃に目が覚めることがある。 部屋の大きな窓を開けると、月が見える。 東京新宿のビル群の上に浮かぶ月。 この時間は私に1番優しい。 東京に住みはじめて15年が経つ。 誰かに連れて行ってもらわないとどこへも行けなかった18歳までの自分と何が違うんだろう。 35歳になったら仕事ではベテランと呼ばれるようになり、デコボコでグラグラしていた足場は、いつの間にかしっかりと固まっていた。 それはほんとうに嬉し

          【住所不定宇宙】

          虎に翼、じゃあ私には何?

          2024年4月1日、午前8時。 実家のテレビの前で正座して待つ。 朝ドラ「虎に翼」の放送開始と同時に、米津玄師が書き下した主題歌も初めて流れる日だった。 朝ドラも「らんまん」以来、見る習慣がついたのでもちろん見る気でいたけれど、「さよーならまたいつか」をどうしてもこの日の朝に聴きたかった。 それはただ、彼の音楽が好きなファンとして。 聴いた瞬間にこれから私はこの曲を人生のテーマにしようと決めた。 そして今日、最終回を見届けた。 もちろん泣いた。 この涙の理由はなんだろうと

          虎に翼、じゃあ私には何?

          未来をつなぐ場所

          結婚もせず、子どもを産む意思があるのかないのかわからない私は何を誰に残せるのだろう。 美容師になるために18歳で家を飛び出すまで、ずっと同じ美容室に通わせてもらっていた。 家から車で2分くらいの、セット面が3席でシャンプー台は2つ。 イチゴ味の三角の飴と、数冊だけ漫画が置いてある。 引き戸を開けると、目の奥までツンとさせる香りがする。それはときどき母の髪の毛から香ってくるものと同じだった。 靴を脱いでスリッパに履き替えるこの空間は、家とは違う安心感をくれた。子ども用のキャ

          未来をつなぐ場所

          35歳のセンス・オブ・ワンダー〜裏道編〜

          実家へ帰省すると、散歩をすることが多い。 むしろその他にやることがない。 あるといえばあるのだけれども、家にいると際限なく食べてしまう。 あれ食べな、これ食べなは日本人の愛の表現だと最近何かで読んだ。 その愛を私は存分に受けたくなってしまう。 いつからか実家にいる方が特別になった。 父と母にとってもそうだろう。 私が家にいる方が非日常で、いない方が日常だろう。 お風呂を洗うタイミングとか、エアコンの設定温度とか、「うちではこう、」の「うち」には私は含まれていない。 18

          35歳のセンス・オブ・ワンダー〜裏道編〜

          不規則な公転周期で踊り続ける

          2024年4月16日、私の人生はひと回りしたな、と実感する日だった。 先日、愛するBUMP OF CHICKENの5年ぶりに発売されたアルバム「Iris(アイリス)」が届いた。 そしてそのアルバムの初回版には2024年2月から開催されたツアー「BUMP OF CHICKEN TOURホームシック衛星2024」のファイナルのライブ映像がBlu-rayで付いてくる。 新しいアルバムはもちろんのこと、このBlu-rayこそ私が待ち望んでいたものだ。 私はこのツアーの宮城公演1

          不規則な公転周期で踊り続ける

          帰省日記/2024年8月11日〜

          8月11日 去年もお盆に帰省していたと思っていたけど、日記を見返したら違っていて、人の記憶とは曖昧になっていくものだなと思った。 兄夫婦と姪っ子2人が実家に泊まる。 普段父と母と猫1匹の家は今日から2日間賑やかになる。 猫もたいそう気が休まらなそうだった。 夕方は朝顔の水やり、夜は花火。 姪っ子とのお風呂も初めて。 今日あった姪のかわいいこととか、かわいい言い方とかをじっくり思い出しながら眠りにつきたかったけど、思い出す前にあっという間に眠った。 8月12日 朝から元

          帰省日記/2024年8月11日〜

          「なぜ私は書くのか」を書き終えてから、もう一回考えてみた

          なぜ私は書くのか 昨日締め切りギリッギリで投稿した藤原華さん主催のコンテストのテーマがそれだった。 このテーマを見てから そういえば、なんで書くことが好きなんだろうとちょっとだけ考えてみた。 日記をつけ始めたのは小学5年生の時だったと思う。ジャポニカ学習帳の日記帳を当時の担任の先生はクラスの全員に配った。 今日あったことを教えてほしい 毎日提出してもいいし、しなくてもいい。 いま思うとその時代にしてはだいぶ型破りな先生だ。 私はほぼ毎日先生へ提出していた。真面目である

          「なぜ私は書くのか」を書き終えてから、もう一回考えてみた

          書くことは私を独りにしない

          いつか自分がどうにもこうにも何者かもわからなくなって、それでも字が読めるとしたら、私は私の言葉で書いた日々を読んで死にたい。 自分が書いたはずなのに、それさえも忘れて書いたのも誰かわからない、そんな日々のことを読み続けたい。 あの日々の続きはどうなったのだろうと思いながら走馬灯を見て、ああ、これは私の人生だったのだなぁと思い出しながら死にたい。 生まれてから死ぬまでの毎日毎日をどうにか忘れずに、生きていたい。 きっと人生を左右しただろう不恰好な日々を何度だって思い出しながら

          書くことは私を独りにしない