アニメ化で魅力を再確認!エッチで不健全なソフトBL×心霊バディミステリー『さんかく窓の外側は夜』
【レビュアー/新里裕人】
先日、放送開始されたアニメ版の1話を観たのですが、非常にテンポが良く、本作の魅力が凝縮したものになっていました。
原作のコミックスは全10巻で完結済み。
累計発行部数は170万部を超えるヒット作で、今年(2021年)の1月には岡田将生、志尊淳、平手友梨奈が主演で実写映画化もされました。
本作は、現実と呪術が交差する複雑な事件を、霊感能力を持つ二人組が解決する「霊媒ミステリー」ともいえる内容であり、エンターテインメントとして非常に完成度の高い作品です。
私がこの作品を読んだのは、割と最近だったのですが、それまで作者のヤマシタトモコ先生の作品は『違国日記』しか読んだことがなかったので、あまりのイメージ違いにびっくりしてしまいました。
『違国日記』
35歳の少女小説家がふとしたはずみで、姪である15歳の少女を引き取る事になる話で、2人を中心にした日常が延々と語られる漫画。
人と人との心のすれ違いや、生きる上での悩みなどを(自分には絶対思いつかない)繊細な切り口で描く内容に衝撃を受けていた私は、『さんかく窓~』に詰め込まれたサービス精神に別の意味で驚いてしまったのです!
以下、本作のポイントについて語ります。
①全体に漂う背徳感
主人公たちは、人に見えない霊を見る力を持っており、それによって事件を解決しますが、どう見ても、それが「正義の力」には見えません。
彼らに協力する刑事が出てくるのですが、彼は「霊を信じない」という特性があるおかげで呪いによる影響を受けません。つまり作品における唯一の「善」として描かれておりそれが救いになっています。
一方で主人公たちは、霊媒中に「気持ちよく」なったり(後述)、後で気持ち悪くなったりいつも不安定で不純な感じ。でもそれが良いです(笑)
②微BL「除霊ってこんなにエロくていいの」
上記の背徳感に通ずる部分ですが、主人公2人組が協力して霊媒を行う際には失神する程の快感を感じるなど、意図的に「不健全」な要素を入れています。
念のため断言しておきますが、上記要素は本作のフレーバーに過ぎないので
「それ」がメインの話にはなりません。
③キャラクターがめちゃくちゃ魅力的!
こればっかりは読んでもらうしかないのですが、主人公を取り巻く登場人物が本当に魅力的です。
前述した「霊を信じない」刑事がとにかくかっこいい!(強面なんだけど実は愛妻家!)あと、若い女性に人気のイケメン占い師が出てくるんですが、霊能力を悪用する詐欺師的な人物だと思っていたら、実は面倒見のいい奴だったり。
そしてクライマックスには、きちんと主人公の過去が物語に結末にきっちりと絡んでくるみごとな構成となっています。
最終10巻は今年(2021年)の3月に刊行されたばかり。
今なら一気読み可能です!
それにしても、霊が視えてしまう『さんかく窓』がアニメ放送された同クールに『見える子ちゃん』のアニメが放送されているのも面白いですね。
全然ノリの違う作品ですが、こちらも面白いので良かったら読み比べてみて下さい。