世界が息苦しく感じたら、コンプラ度外視のサラリーマンギャグ漫画で爆笑してみたら?『鉄人ガンマ』
【レビュアー/山田義久】
新型コロナウイルスの蔓延が始まって早一年以上。
人とのコンタクトがないことがストレスになっていることも多いかと想像します。テレワークで家から仕事していても然り。
こういう時に、シンプルな笑いを与えてくれるのがギャグ漫画です。ただ、大人としては、よくある子供向けギャグ漫画はいまいち笑えません。
というわけで、現実の社会のエッセンスをちりばめつつ、現実と非現実との間で絶妙な笑いをとってくれるギャグ漫画の名作として、この『鉄人ガンマ』を紹介します。
ギャグ漫画もやっぱり主人公のキャラの魅力がすべて。
そして、魅力というのは往々にしてギャップから生まれると。
さらに、ギャップというのがたくさん集まって球体みたいになっている人がより魅力的な人か、と思いますが、主人公のガンマはまさにそれ。
本名は丸麻照男(ガンマテルオ)39歳。時代は1990年代前半なので厳密には昭和でないのですが、出てくる企業風土や家族関係はまさに昭和。
ガンマは、三流大学出身で中堅食品スーパー勤務の社員。団地に住むうだつが上がらない安月給サラリーマン。勤務態度は非常に真面目。
見た目としては、ハンパなく顔が大きい。そして天然パーマ。さらに顔のパーツはよくなくルックスははっきりいってブサイク。
『鉄人ガンマ』(山本康人/ゴマブックス)1巻より引用
一方、気性は質実剛健、そして身体は筋肉隆々で、さらに感情が高ぶるとなぜか盛り上がる。
さらに、奥さんは超美人でしかも、略奪結婚、その後駆け落ち(なんと奥さんが別の人と結婚式をあげている時に乱入して略奪)。
夫婦仲は極めてよく、子供ができた今も相思相愛。誰に対しても奥さん(通称:オシリーナ)のことを「愛している」と叫べる最高の性格だ。ただ基本小心者で、緊張するとトイレに籠り、本番でもとんでもないやらかしをする。
質実剛健故に、たまに他の女性といろんなチャンスがある。その度にエロい顔してエロいことをしようとするが、最後に「ぼくはただのお下劣な豚だ~!」と自己嫌悪するのがパターンだ。
総じて、愛する家族を養う主人として、社会的地位の低い自分を変えようとしている。気持ちはピュアで感情も真っ直ぐながら、とんでもない方向に突っ走ってしまうところがおもしろい。
後半で、海外旅行もほとんどいったことない純ドメ(純粋ドメスティック:留学や海外居住経験のないの意)なのに、初めて行ったハワイで「ブリーフマン」としてプロレスラーデビューして、なぜかスーパースターになるが、まさにそういうところだ。
そう、なんというか、一見真面目そうなただのサラリーマンなのに、そのピュアさ故にちょいちょい無茶する。それにまわりも巻き込まれていく様子が最高に笑える。
ちなみに私がお気に入りのシーンは、略奪婚に反対していた義父がついにガンマに対して「む 娘を不幸にしたら貴様を殺す!!」とすごまれた時のガンマの返しだ。
『鉄人ガンマ』(山本康人/ゴマブックス)より引用
そして、一見荒唐無稽に見えることの漫画も、現実の企業社会でも「意外と重要なことは理屈より人間の感情で決められることが多い」ことを踏まえて読むと、なんとも味わい深いのだ。
まぁ、今読むといろいろコンプラ的にアウトだろうが、とりあえず笑えるのでぜひオススメ!