![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/36278728/rectangle_large_type_2_68b25731442807979882372068715fe2.jpg?width=1200)
新たな名作が誕生!『BLEACH』から受け継がれる魅力と伝説の幕開け『BURN THE WITCH』
全世界で累計1億2千万部が発行されている『BLEACH』の作者・久保帯人先生の新作『BURN THE WITCH』のアニメが、全国35館で劇場公開されてから1週間が経ちます。皆さん劇場へ足を運んだでしょうか!? まだの方、2週間限定なので、10/15に終わってしまいますよ…!
※アニメ版は、Amazonプライムで視聴可能です!でも、もし可能なら映画館で『BURN THE WITCH』の世界に浸ってほしいです!
と、アニメ版から語りたくなるくらい物語のクオリティが素晴らしく、手放しでおすすめできる本作ですが、今回は原作漫画(コミックス第1巻)について語ります。
『BLEACH』から継承される魅力3点
『BURN THE WITCH』は、2017年に読切版が描かれており、そのラストシーンで『BLEACH』と同じ世界の物語であることが判明します。さらに、画集『BLEACHイラスト集 JET』へ掲載された久保先生へのQ&Aで、『BLEACH』最終話の2年後であることまで確定しています。『BURN THE WITCH』というタイトルの中に『BLEACH』の文字が隠れている印象的なラストシーンは「週刊少年ジャンプ」に掲載された当時、SNSで大きく盛り上がっていたことを覚えています。
『BLEACH』で描かれる死後の世界の「尸魂界」(ソウルソサエティ)は、全74巻のうちたった一度だけ「東梢局」(とうしょうきょく)と表記されました(『BLEACH』50話の最終ページで描かれています)。
簡単に言うと『BLEACH』の「尸魂界」は東側、ということです。「東があれば西もある」と、「残火の太刀」を振るう山本元柳斎重國が『BLEACH』507話で言っていた通り、西の「尸魂界」もありました。
『BURN THE WITCH』の舞台であるイギリス・ロンドンには、表裏一体の裏世界「リバース・ロンドン」が存在します。この「リバース・ロンドン」が「尸魂界」の西梢局に当たります。そんな西の「尸魂界」で描かれる魔女とドラゴンの戦いが『BURN THE WITCH』なんですが、『BLEACH』を感じるところが沢山あり、久保先生のファンとしてはたまらん作品です。その一例を紹介します。
1・書き下ろしの巻頭テキスト
『BLEACH』でおなじみの、コミックスのページを捲ってすぐに書かれた久保先生書き下ろしの詩が『BURN THE WITCH』にもあります。1巻のテキストは4行あり、この4行が世界観を深めています。『BLEACH』だと、表紙のキャラクターに関連のあるものだったのですが、『BURN THE WITCH』の表紙はキャラクターが目立たない構図になっており、それゆえに誰の目線なんだ!?と気になります。主人公のひとり・ニニーのマジックキットが描かれていますが、物語のテーマと合わせるとニニーを見ている誰かなのでは?という考え方もできます。僕はメイシーという登場人物を表した詩でもあるのかな、と思って読んでいます。
2・人物の一対一の関係性
『BLEACH』で主人公・黒崎一護と死神・朽木ルキアが相棒だったように、『BURN THE WITCH』でも、ダブル主人公である新橋のえるとニニー・スパンコールによって物語が動いていきます。
『BURN THE WITCH』(久保帯人/集英社)1巻より引用
軽口を叩き合う仲でありながら、根っこでは信頼で結ばれている二人!という関係性は「久保先生の作品を読んでいる!」という気持ちを強くさせてくれます。
ニニーが先輩であるにも関わらず、のえるが発言を拾ったうえで"軽くあしらう"、というシーンが沢山ありますが、彼女は絶対にニニーのことが人として好きなんだろうなと伝わってくるんです。
のえるとニニーだけでなく、ニニーと同じアイドルグループの元メンバー・メイシーの"友情だけではない何か"、のえるの「表ロンドン」での先輩・バルゴからの"のえるへの片想いと思いきや…!?な関係"、バルゴと彼の親友・セルビーの"すれ違い"など、たった1冊のなかで一対一の関係性が色濃く描写されています。また、ニニーとのえるの所属する「WB」(ウイング・バインド)の「魔陣隊」(インクス)のトップであるブルーノとその相棒・リッケンバッカーや、のえるとドラゴン・ワーズワースの"人とドラゴン"という関係性も、少ないシーンながら絆を感じさせてくれて、最高です。
3・久保先生の画力とデザインや構成のセンス!
画面の構図がバチバチにキマっているのは『BLEACH』と同じです。しかも、ドラゴン!魔法!!など少年心をくすぐられる要素ばかり。また、随所に散りばめられた、久保先生ならではの、格好良く唯一性のあるデザインの数々も最高です。
『BURN THE WITCH』(久保帯人/集英社)1巻より引用
このブルーノ・バングナイフというキャラクターは、作中で描かれる組織「魔陣隊」(インクス)のリーダーで、部隊名の通り「魔法陣」を描くことでモンスターを召喚し、敵のドラゴンと戦います。『BLEACH』の敵・虚の仮面を思わせる禍々しいマスクを装着して、「魔法陣」をカラースプレーで相棒のドラゴンの羽に描くという戦闘方法が、もうとにかく格好良いです。
マスクはファッションではなく防塵のために着けている事や、スプレーのインクを使うから「インクス」という名称なんだ!という事など、デザインや設定に一切無駄が無い。そして読者がそれに気付けるくらい物語が練られている!という発見があるのも、読んでいて気持ちが良い要素です。
ジャンプの新たな伝説となるべくして生まれた『BURN THE WITCH』!
『BLEACH』の世界観から続く物語であり、久保先生自身が描いているため『BLEACH』イズムを沢山感じましたが、読み切り版と連載版を比べると、連載第2話〜第4話は『BLEACH』の要素がどんどん薄まっていきました。1巻が終わった時点で、『BURN THE WITCH』は独立した一つの物語として盛り上がってくはず!という予感があります。
1巻の時点で、のえるとニニーが所属するWB(ウイング・バインド)の各部隊の長官で構成された「トップ・オブ・ホーンズ」の7人が既に登場しているだけでなく(1人だけ「欠席」とのことですが、シーズン2の予告で登場済。『BLEACH』で例えると1巻の時点で「護廷十三隊」の隊長が勢揃いしているようなものです)、7匹の「童話竜」(メルヒェンズ)を討伐すべしというゴールが示されており、物語の大枠はすでに最後まで決まっているように感じます。
また、細かい謎として、チーフの正体(というか、出自?)、バルゴが最後に出現させた物の謎、なぜニニーが「戦術隊」に入りたいのかなどがあります。『BLEACH』を隅々まで読み込んだ方にとっては、久保先生が巧妙に伏線を張る作家だという事は周知の事実なので、予想や想像をする楽しみも膨らみますね!
のえるとニニーがこれから戦うことになる「童話竜」は「スノーホワイト」「レッドドレス」「ゴールデンアックス」「バブルズ」「シュガーハウス」「バンドオブアニマルズ」という名前が既に明かされており、それぞれ「白雪姫」「赤ずきん」「金の斧」「人魚姫」「ヘンゼルとグレーテル」「ブレーメンの音楽隊」という物語の要素を持っていることが予想できます。
童話に詳しい方は、『BURN THE WITCH』にどのようにその要素が絡んでくるか予想が立っているのではないでしょうか。
このように、『BLEACH』から続く物語ということを考えなくても、これだけワクワクさせてくれるのですから、『BURN THE WITCH』は名作になるぞ!という予感しかありません。
とはいえ、個人的には最終巻あたりに『BLEACH』のキャラクターが出てきてくれると嬉しいです。
『BURN THE WITCH』は、2巻以降も続くことが既に決定していますが、短期集中の「シリーズ連載」という予定です。よって、次回の掲載は「Coming soon」となっています。1巻を繰り返し読みつつ、そして『BLEACH』も読み返しながら、令和の時代に描かれる久保先生の新しい世界を一緒に楽しみましょう!
※沢さんは「『BLEACH』全74巻を毎日振り返る」という驚異のレビューを達成されています。
※東京マンガレビュアーズでの沢さんレビューのレビューはこちら
WRITTEN by 沢
※東京マンガレビュアーズのTwitterはコチラ