東京都教育委員会指定「生成AI研究校」
東京都の「生成AI研究校」
私の勤務校は東京都教育委員会から「生成AI研究校」に指定されています。
ここでは研究校の概要をお伝えします。
生成AI研究校とは
生成AI研究校は、東京都教育委員会が2023年度(9月末)から指定した都立高校、中等教育学校後期課程、特別支援学校高等部です。
2023年度は私の勤務校を含めた9校、2024年度は継続校9校に加えて新たに11校が追加され、計20校の指定となっています。
これらの学校は、生成AIの教育活動での活用に関するパイロット的な取組を進めています。
東京都の「生成AI研究校」は、文部科学省が指定している「リーディングDXスクール 生成AIパイロット校」と相前後して指定されましたが、東京都も文部科学省も年度途中でこういった指定をするのは珍しく、生成AIの進展の早さや教育への影響の大きさを実感しますね。
研究内容
研究校は、校内における生成AIの効果的な活用に向けた以下の研究を行います。
AIリテラシーの指導法について
授業等における効果的な活用法について
教職員の校務における効果的な活用法について
AIリテラシーの指導法
研究校で実施する「初回授業」で、生成AIの基本的な仕組みやハルシネーションについて学びます。
生成AIの仕組み(概要)
生成AIは大規模言語モデル(LLM)の一種であり、単語の連続性を基に生成されるものですが、しばしば誤情報を含むことがあること、また、適切なプロンプトを見つけるための試行錯誤が重要であることを説明して、生成AIとはどういうものかという理解を促しました。
ハルシネーション体験
続いて、生成AIがハルシネーションを起こしそうなプロンプトを作成して実際に試し、面白い回答が得られたら全体に共有するという実習に取り組みました。
面白い回答の例としては、昨年10月の初回授業で「東京ディズニーランドの所在地を教えてください」とGPT-3.5に聞いてみたら、「東京ディズニーランドは東京都浦安市舞浜にあります」という誤った回答が生成されました。
同様に同じ質問をGPT-4に投げると「千葉県浦安市舞浜」という正しい回答が返ってくることから、ハルシネーションは生成AIの性能にも影響を受けることをもイメージできました。
(ちなみに現在ではGPT-3.5でも「千葉県」と回答します)
ハルシネーションとメディアリテラシー
2024年7月に出された文部科学省の「初等中等教育段階における生成AIの利用に関する暫定的なガイドライン」においても、ハルシネーションが生成AI活用における大きな懸念材料として扱われています。
この文書の中で「最後は自分で判断するという基本姿勢が必要となる」と書かれていますが、これは生成AIを活用する場合に限らず、情報収集するうえで常に意識すべきことですよね。
生成AIに独特の誤謬も存在しますが、基本的にはメディアリテラシーを身に着けることが大切だという話をしています。
授業等における効果的な活用法
生徒が使える環境
exaBase
指定校で授業に利用できる環境として、Azure上のOpenAI ChatGPT APIを使用して構築されている「exaBase」というシステムが導入されています。
このexaBaseはGPT-3.5、GPT-4およびRAGである「データ連携機能」を使用することができます。
現在は一般に提供されているシステムをベースに、より安全性を高めた環境になっているようですが、今年度8月を目標に都立高校での利用に特化した環境構築が進められています。
各教科での活用
「情報Ⅰ」や「総合的な探究の時間」のほか、各教科での授業内利用も進んできています。
この辺りは別稿で書こうと思います。
教職員の校務における効果的な活用法
Microsoft Copilot
校務で生成AIを使う場合は、Microsoft Copilotを利用できる環境になっています。
都庁全体のルールとして、業務は「安全性が確保された庁内の共通基盤で文章生成 AI を利用すること」となっています。
・入力データが学習目的で利用されない
・入力データの保存をサーバー側で行わない
職員が守るべきルール
ルール1 個人情報等、機密性の高いは入力しなこと
ルール2 著作権保護の観点から、以下を十分注意し確認
・既存の著作物に類似する文章生成つながようプロントを入力しいこと
・回答を配信公開等する場合、既存の著作物に類似しないか入念確認
ルール3 文章生成 AI が生成した回答の根拠や裏付けを必ず自ら確認
ルール4 文章生成 AI の回答を対外的にそま使用する場合は、旨明記
校務での活用方法
生徒に使わせるのではない、という括りでいえば、授業準備や教材作成も校務の範疇に入ります。
その中で意外と便利だったのが「ダミーデータの作成」です。データ分析の実習で適当なデータを作るのは意外と面倒なのですが、これがサクッと作れた時は感動しました。また、選択肢問題の「誤答」を考えるのも割としんどいので、こちらも結構使います。
その他文書作成的なことなどもありますが、詳細はこちらも別稿で。
「業務」の範囲
校務員である公立学校の教員としては、守るべき決まりや制約が多いのは仕方がないことだと思っています。
それでも最新の動向を押さえておくことも大事なので、「業務」ではなく個人の研究としていろいろ試していきたいと思っています。
ただ、教員の場合その線引きは大変難しく、「教材研究」が業務に含まれている以上、「本を読む」「TVを見る」「旅行に行く」なども自分にとっては教材研究になったりします。
今のところ、東京都教育委員会の指示として、利用申請を済ませていれば個人で利用登録した生成AIの画面を授業中に生徒に視聴させることはできることになっているので、教材研究レベルなら個人での利用も大丈夫と判断しています。