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「オンラインでお酒を販売するプラットフォーム」というシンプルな事業が1200億円で買収されたワケ

オンライン酒販で大成功 謎の企業『Drizly』とは?

 Drizlyは、モバイルアプリやウェブサイトを通じて、地域の小売店からお酒の配達を促進するオンライン注文・配達プラットフォーム。同社は約4,000の小売店と提携しており、全米で1400以上の都市をカバー。250万人以上の利用者を誇る。
 各エリアごとに注文可能なアルコール飲料のリストが掲載され、最短で60分以内に商品が到着するというサービスになっている。

Drizlyの歴史

 Drizlyは2012年にボストンカレッジの卒業生3人、ニック・レラス、ジャスティン・ロビンソン、スペンサー・フレイザーによって設立された。2013年にボストンでサービスを開始し、その後、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴに拡大。
 創業から3年後、シリーズAラウンドでベンチャーキャピタル数社から約14億円を調達。
 2016年、カナダに進出し、シリーズBラウンドで約16億5000万円を調達。
 2018年には世界第三位のビール生産量を誇る、大手ビール製造会社アンハイザー・ブッシュと提携。オフィスにビールをストックしておき、在庫が少なくなると自動的にビールを再注文するサービスを開始。
 2021年には結婚式にアルコールを届けるサービスを開始し、業績を押し上げる。
 同年10月、Uberが現金と株式合わせて1200億円を使用し同社を買収した。

このシンプルなビジネスモデルをなぜ今まで誰も考えつかなかった?

 創業者の1人、ニック・レラスは「なぜ、携帯電話を使ってアルコールの配達ができないのか」という疑問を抱いた。
 「モバイル端末は消費者が毎日持ち歩く道具であり、この道具を活用して売り上げを伸ばし、競争力を高めない手は無い。ビッグデータが溢れるこの世界で、アルコール飲料業界は遅れており、それを補うためにわざわざ広告に何十億円も費やしている。」と彼は考えた。
 アメリカではそれぞれの州ごとに異なる規制があるため、営業免許を取得していない地域でアルコールが販売できない。そのため酒屋が自社でeコマースサイトを構築することが非常に非効率であった。Drizlyは酒販免許を保有している各地域の小売店をオンラインで出店させるというマーケットプレイス型にすることで、このネックを解決した。
 Drizlyは、ライセンス料と広告料の2つを収益源としている。
ライセンス料に関しては、月額1万円から100万円の範囲で出品する商品数や売り上げに応じて決まる。
 広告料は、購入データを元にユーザーの興味に沿った広告を配信する。例えばジンをたくさん購入する顧客に対しては、Drizlyのパートナー企業であるジン製造会社の広告が自動的に出てくる、といった具合だ。
 アプリ自体は非常にシンプルな作りとなっている。サインイン後、プロフィールを設定し、配達してほしいお酒やビールを検索、注文。1時間ほどで自宅に届く。独自技術によってドライバーが、購入者がアルコール購入の法定年齢に達しているか確認することが可能となっている。

コロナ禍で需要が爆発、巨大企業が目を付ける

 Drizlyでは多くの店舗から、普段飲むお酒から珍しい種類のお酒まで幅広く見つけることができ、ミレニアル世代やZ世代の若者を中心に人気となった。特にコロナの巣ごもり需要で人気に火が付き、家でお酒を飲むというスタイルの定着に繋がった。
 この在りそうで無かったオンライン酒販の事業は酒販業界だけでなく、デリバリー業界の中でも脚光を浴び、2021年にUberがなんと1200億円もの金額でDrizlyの買収を決めた
 「ブランドから販売店、小売店、消費者に至るまで、アルコール飲料業界のあらゆる分野に価値をもたらしたいと考えていました。」という創業者の想いが業界に変革をもたらした。


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