2024ベルリン観劇記録(31)Götterdämmerung
3月24日、シュターツオーパーで『ニーベルングの指環』4作目『神々の黄昏』鑑賞。なにはともあれ完走したことに対する達成感が大きい。観客にはかなり高齢の方も見受けられたが、皆さまお元気で何よりである。
指揮 Philippe Jordan
演出/舞台美術 Dmitri Tcherniakov
衣装 Elena Zaytseva
照明 Gleb Filshtinsky
映像 Alexey Poluboyarinov
出演 Andreas Schager, Roman Trekel, Johannes Martin Kränzle, Stephen Milling, Anja Kampe, Mandy Fredrich, Violeta Urmana, Marina Prudenskaya, Kristina Stanek, Anna Samuil, Evelin Novak, Natalia Skrycka, Ekaterina Chayka-Rubinstein
やはり最後まで気になったのが演出のリアリティラインだ。最後まで舞台美術と場所の設定が先行で、作品の主要テーマや筋行動には重きが置かれていない。研究所に設定したのは良いとして、作品世界の置き換えが中途半端なままで理屈(言い訳)がなく、演出面ではあまり楽しめなかった。おそらく研究所のリアルな白色灯にこだわった結果、照明での場の描写が薄く、たとえば「幻想なのか実体なのか」が視覚的に表現されない。また、家の中のシーンと長い長い間奏の演出が非常にぼやけており、かなり退屈してしまった。音楽は雄弁に豊かに語るのだが、リアルなセットの中で動機もなくぼんやり立たれると、目のやり場に困ってしまう。第三夜のミーメとジークフリート、ヴォータンとアルベリヒの場面などはかなり見応えがあったので、役者の問題もあったのかもしれない。
ジークフリートとブリュンヒルデの歌唱には全日感激した。筋行動からは強さ以外英雄的と感ぜられなかったジークフリートも、歌に関しては紛れもなくスターである。軽快にくるくるとよく動き、楽しそうにセットの中を歩き回る。歌手自身の個性が嵌ったのだと想像する。主人公を演じるに足る格、器というようなものが見えた。
演出や筋行動では承服しかねる場面が、ワーグナーの楽曲により力技で感動させられることもあった。特にジークフリートの死がそれで、あんな風に英雄的感動的に語られるような人物/人生だろうか?わたしにはとてもそうは思えないのだが、楽曲が高まれば気分にも影響を与える。おそろしいものだ、音楽は。