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『ドン・カルロス』アフタートーク回答①
20日(土)13:00-のアフタートークで、twitterアンケート #教えて深作さん に
mさんが寄せてくださったご質問にお答えしました。まとめ、補完して公開いたします。
色々な解釈があるとは思いますが
フェリペ2世が言う「初恋」とは、文字通りの「初恋」なのでしょうか?
該当箇所の原文
Er war meine erste Liebe.
Project Gutenberg(日本の青空文庫のようなサイトです) の英語訳
He to me a first love.
佐藤通次訳(1927年,『ドン・カルロス』 岩波文庫)
あれは己の初恋人であったのじゃ。
北通文訳(1959年,『世界文学体系 第18』筑摩書房)
あの男は初の恋人だった。
拙訳(2021年)
初恋だった!
どれも原文に素直な訳かと思います。
meine Liebe (英語直訳 my love)を「愛する人」や「愛しい人」と訳すことも多いのですが、私は Meine erste Liebe. の erst-e (first)の部分を大切にしたいと考えました。
「初めての恋人」は説明的すぎますし、ポーサがカルロスやフランドルを選択したことがわかった後に〈恋人〉関係(互いに思い合っているのが前提)と言ってしまうのは、現代の感覚だとフェリペの思い込みが強すぎるように感じられると考えました。格好がつかない。いやいや違うだろ、と。
ずっと待ち望んでいた、思いがけない、不意打ちの、初めての強い情動を感じた感激、を表現した「初恋」です。「文字通りの〈初恋〉」を得た王の喜びと哀しみを感じていただけたら嬉しいです。
2021年公演の上演台本からは、
〈自由〉や〈人間〉について率直に語り教え伝えようとしたロドリーゴ
〈自由〉をあなたにはわからないと切り捨てたエリザベート
の対比が読み取れるでしょう。
王フェリペと王妃エリザベートは〈自由〉やフランドル地方のプロテスタント認可について話したことがあり、互いに考えを変えることはなかった。その過去がある為、劇中の場面で王妃は最初から王との対話を諦めている――というのが私の考えです。
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