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2024ベルリン観劇記録(9)Mutti, was machst du da?
2月17日ベルリン9本目。
ベルリナー・アンサンブルの小劇場Neues Hausにて、シュテファニー・ラインスペルガー、コンスタンツェ・ベッカー、ティロ・ネストが親子3代を演じる新作。歌あり演奏ありの家族ものコメディ。
作 Axel Ranisch, Paul Zacher
出演 Stefanie Reinsperger, Constanze Becker, Tilo Nest, Max Gindorff, Kathleen Morgeneyer, Jonathan Kempf, Martin Rentzcsch
演出/映像 Axel Ranisch
舞台美術 Saskia Wunsch
音楽 Martina Eisenreich
照明 Hans Fründt
ドラマトゥルギー Johannes Nölting
「〈家族〉は社会における最小単位の細胞である」とは、なにもDDR東ドイツでのみ言われていたのではない。しかしそれは今日、一体どんなことを意味するのだろう? Axel Ranischと Paul Zacherの新作コメディでは、さまざまな運命、人々、世代、多様な形の家族らが、ベルリン-リヒテンベルクの住宅管理事務所でにっちもさっちもゆかなくなり、最終的に一同揃って生活しなければならなくなる。そして世界や愛や幸福について、それぞれが独自の見方を持っていても、音楽がその大変さを和らげてくれる、ということについては同意するのだ。
東ベルリン生まれのAxel Ranischは、 "Dicke Mädchen" (2011)や "Ich fühl mich Disco" (2013)のような映画を監督する傍ら、定期的にオペラの演出も手がけている。2018年にはデビュー小説 "Nackt über Berlin" が出版され、シリーズで映像化し成功を納めた。夫である作家のPaul Zacheとは創作において顕密な協力関係を築いている。
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休憩なし、110分。わたしにとってシュテファニー・ラインスペルガーとコンスタンツェ・ベッカーは、ラース・アイディンガーと共に、ベルリンにおいて「この人が出ているならば何はともあれ観に行こう」と思わせてくれる俳優だ。ベッカーはミヒャエル・タールハイマー演出の『メディア』や『ペンテジレーア』の圧倒的な存在感が、ラインスペルガーはハントケ『Selbstbezichtigung』やブレヒト『baal』の暴れん坊ぶりが忘れられない俳優となっている。小劇場とはいえセリフ術が巧みゆえ、ネスト、ベッカー、ラインスペルガーの言葉は、最後列に座るわたしの耳にもすんなり入ってくる。古典での重厚な声と吸引力が魅力のベッカーだが、現代劇での少々やさぐれた母親ぶりも大変よかった。ファルク・リヒター作品にもまた出演してほしい。ライスペルガーの母親役となればベッカーが適任だろう。二人とも存在が強すぎる。
筋や演出に関しては新鮮さや発見がなく、特に気持ちが揺さぶられることなく楽しく観るにはちょうどいい、という感想。キャスティングがジェンダーフリーの為、見え方も多様だ。歌と演奏は楽しかった。ブレヒト的なアプローチを意識したのだろうか。プロジェクションは特に効果的と思えなかった。
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