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2024ベルリン観劇記録(2) Mann ist Mann
2024年2月6日ベルリン2本目。
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劇場 Berliner Ensemble ベルリナー・アンサンブル
脚本 Bertolt Brecht ベルトルト・ブレヒト
演出 Mac Lindemann
美術/衣装 Michel Wagenschütz
音楽 Sonja Deffner
照明 Benjamin Schwigon
ドラマトゥルギー Lukas Nowak
出演 Nele Trebs, Dominikus Weileder, Joanna Damberg, Philipp Jacob, Till Raskopf, Maurice Läbe, Nele Rößler
上演時間95分。コロナ直前ごろに新築されたベルリナー・アンサンブル内の新小劇場。いわゆるブラックボックス形式で席数は100ほど。エルンスト・ブッシュ演劇大学との共同制作。『男は男だ』は日本でもたまに上演されている。
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どうして私は、この私なのだろう?この私は、私が自由にそうと決めた私なのだろうか? それとも社会が作り出した私なのだろうか? ブレヒトは喜劇『Mann ist Mann』の中で「誰か、は誰でもない」と書いている。わたし達が何者であるのかは、一緒にいる人達や、わたし達が生きる世界との関係性により決まる――いや、それとも、わたし達が自由に決めているのだろうか? 1920年代のこのブレヒトの戯曲は、平凡な男である配送作業員のギャリー・ゲイが、兵士たちに上手く利用されて変化してゆく様を描いている。ギャリー・ゲイは兵士たちによって車の様に〈再構築〉されるのだが、彼自身も再構築されることを喜んでいるのだ。
出演者たちが現役学生ということもあり、エネルギーをコントロールしきれていない上滑り感が強い。発話や身体表現のクオリティに差がある。例えば、昂る場面でもドイツ語が第一言語でないわたしの耳にすっきり届くかどうか。その点、主演がもう一歩及ばず。Nele Rößlerは小柄ながら重心の安定した存在感があり、印象に残った。表情や所作に、おそらく演出ではなく本人による細かな工夫があり、見応えがあった。歌もうまい。大柄なPhilipp Jacobの統制がとれた芝居にも好感を抱いた。Maurice Läbeには爆発力があり、「変態的」な振る舞いが適度に気持ち悪く面白く観られた。上がり切ったところからストンと落とせるようにるといい。これからが楽しみだ。
全体的にドタバタと元気いっぱい。強弱のバランスが取れていないのは演出あるいは俳優の未熟さ若さゆえか、もう少しシリアスに見せたい場面もあったのではないか。全体的にぼんやりとしてしまった。
エルンスト・ブッシュ演劇大学の学生は、ベルリナー・アンサンブルのみならずドイツ座やシャウビューネなど、ベルリン市内のプロの劇場で上演/出演する機会を得られるのが羨ましい。そもそも演劇専門の大学があって羨ましい。
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