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2019ベルリン観劇記録(10)『Baal』
10月13日
Baal バール
作 Bertolt Brecht ベルトルト・ブレヒト
演出/舞台美術 Ersan Mondtag
舞台美術補佐 Marcel Teske
衣装 Ersan Mondtag, Annika Lu Hermann
音楽 Eva Jantschitsch
Künstlerische Beratung Clara Topic-Matutin
照明 Ulrich Eh
コーラス指揮 Jonas Grundner-Culemann
コレペティートル Max Doehlemann
破滅型の芸術家バールを演じるのはスター俳優Stefanie Reinsperger だ。バールと同じく戯曲上男性として書かれているバールの友人エッカートも女優Kate Strong が演じている。(性を男女で分けられるものだとは考えていないが、便宜的に女優/男優と記す)弱冠32歳の演出家Ersan Mondtag は、現在ゴーリキー劇場のレパートリーに入っているSalome サロメでもサロメ役に男優を配すなど、性的に固定され誇張されたキャラクターのイメージを揺さぶることが多いようだ。バールが舞台セットの一つである両性具有の裸像からペニスを叩き落とすシーンは印象に残った。かつて学生演劇団体でハムレットを演出した際、当時100kg以上の体躯であった男優をオフィーリアにキャスティングしたなあ、と個人的に少々懐かしくもなった。
盆の上に四つに分けてセットが組まれ、回転するごとにシーンが変わる。模型然としており、どうも空想的だ。主人公バールの現状のどうしようもなさ、抜け出せなさを箱庭的空間で見せようとしたのだろうが、あまりにもくるくるとせわしなく回り、コーラスや振り付けと相まって、美術を見せたい上演なのかと思わされ、疲れる三時間だった。演出家が美術と衣装をデザインしているため非常に統一されているのだが、作りたい世界が先行しており、戯曲が置いてけぼりにされていると思う。『自罰』を一人で演じきる力のあるReinspergerを演出しきれていない。私が観た上演では、一幕の終わりとともにブーイグもあった。
正直に言うと退屈で辛い三時間だったが、若手の演出家がベルリナー・アンサンブルの大劇場でブレヒトのバールを演出できるのだから、なんと文化的に豊かなのだろう!羨ましい!というのが最終的な感想だ。お客様に観ていただくチャンスがなければ、成長もできないのだから。
余談。82年のBBCドラマ『Baal』ではデビッド・ボウイがバールを演じたらしい。
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