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3.8.バジリスク: 捕獲方法

3.8. 捕獲方法


 基本的に、バジリスクの美しい尾は野生下において目立つため、その分布域に存在が確認されている場合、発見すること自体はさほど難しくない。しかし二つの脳でもって常に周囲を観察しているため死角がなく、近づくことは困難を極める。


 バジリスクを捕まえるには、静かに忍び寄るのではなく、逆に大きな音を出したり、複数の人間が異なる動きを見せたりするのが望ましい。バジリスクは警戒し、次の行動を起こしにくくなる。そこを上から押さえつければ、安全に動けなくすることができるのである。これは防衛器官の存在を完全に無視した捕獲法なので、丈夫なグローブなどを装着することは必至である。しかし、上から押さえつけることにより、より危険な距と毒糞はある程度封じることができる。


 駆逐する場合はすぐさま尾を落とし、毒腺を含めて距を落としてしまうのが望ましい。個体を傷つけたくないのであれば、尾と距を覆ってしまうべきである。防御器官の感覚器の大半が目からくるものなので、ガムテープなど粘着質のもので目を覆ってしまうとほとんど動かなくなる(さらに尾歯を縛ってしまうとより安全である)。距は切り落としても毒液を排出することができるため、誤って目や傷口に入ってしまわないよう、細心の注意を払う必要がある (23)。


 罠を仕掛けたり睡眠薬を使ったりする方が安全だと思われがちだが、罠にかかった個体は気が立って攻撃的になっている可能性が高く、追い詰められているため毒を使用するのを躊躇わない。また、罠そのものに毒がすでに付着している可能性も考慮するべきであろう。睡眠薬は個体によって、第二の脳と本体が同時に睡眠状態に陥らないことがある(稀に、まったく眠らない個体すらある)ため、十分に時間をかけて現状を見極めることが重要である。薬剤の種類によっては筋弛緩の如何もあり、バジリスクの意識がなくても毒を漏らすことがある。


 基本的にはバジリスクを確認しても近づかず、地域で対応する専門施設に連絡をするのが賢明である (24)。野生化したバジリスクは自ら人間に近づくことはほとんどなく、保守目的以外で攻撃してくることはない。しかし、行政による駆逐対応に時間がかかると判断された場合は、周辺環境への安全のため、対象個体の行動範囲を知るように指導されることが、稀にだがある。通常10メートル以上離れて観察する限り、バジリスクが攻撃に転じることはない。静かにゆっくりと、しかし常に対象の視界に入るように行動すれば、野生個体にストレスをかけることなく、いつでも逃げられるよう余裕を与えられるので、両者にとって安全である。またバジリスクに対して、人間の生活圏が近いこともアピールできる利点もある。生活領域が分かれば柵や看板を立てるなどして毒による害が予防でき、バジリスク自体が警戒するため鉢合わせにならない他、その後の駆除対策へも有益である。


23)研究者の多くは、爪を切ったあとにプラスチックフィルムやビニール袋をまいてテープで止め、毒液の流出を防ぐ。しかし、これは毒液が漏れないという保証ではなく、あくまで二次的な処置であることを念頭にいれておくこと。


24)バジリスクは要注意外来幻想動物であるため、多くの地域で保健所だけでなく、市・区役所、警察署で応対を受け付けている。発見者がバジリスクと知っていて行政に報告を怠った場合、特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律により、罪に問われる可能性がある(3年以下の懲役や300万円以下の罰金など)。養鶏関係者が許可なくバジリスク駆除を請け負う場合も同様であり、場合によっては依頼人も同罪となる。

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