見出し画像

2.8. マンドラゴラ:駆除対象として

8. 駆除対象として 


 帰化マンドラゴラの断末魔は、人体に重大な影響を与えるほどではないものの、これを聞いた者は苛立ちを覚えたり、暴力行為に走ったり、いわゆる「キレる」行動をとることがある。これによって2008年、神奈川県の中学校で校内清掃をしていた学生が3人、原因不明の暴力行為に走った事例が報告されている(25) 。効果は短期に無効化するが、複数の個体の断末魔を短期間に聞く可能性がある場合、折を見て現状を判断することが重要となる。特に音に敏感な動物、多感な思春期前後の子どもが影響を受けやすい。動物が突然人間を襲う場合、それに生存的理由が見られないのであれば、高確率で原因はマンドラゴラによるものと思われる。しかしながら、これは判断が難しいため (26)統計を出すことは非常に困難である。


 マンドラゴラは2012年に特定外来生物に指定されたが、生きた個体の移動が禁じられてしまうと駆除に差しさわりがある等、様々な問題が隆起されたため、改めて翌年2013年要注意外来生物(現在の生態系被害防止外来種)に指定された。


 外来マンドラゴラはアルカロイド系の有害物質を有するものの、先述の断末魔のように、小型の個体が生命の危機があるほどの毒物を有することは少ない。外来種は各地に発生してはいるが、在来植物を駆逐するほどの勢力があるわけでもなく、従って農業的な被害は危惧されていない。マンドラゴラの主な問題は、帰化種としての認知度が低いことが理由で起こる。正しい知識を持たず、または知らずに利用しようとして、被害を受けることがほとんどなのである。このため、各地の行政はポスターなどで告示するなど、駆除そのものよりも情報拡散に尽力している。


25)いずれも男子学生で、普段は問題行動が見られない子どもたちであった。教師をほうきで殴るなど、何人かの学生を襲って軽傷を負わせている。鎮静剤で安静にさせたところ、半日ほど正気に戻った。マンドラゴラは2-3年ほどの幼体だったが、5体群生していたため、有害音の影響が大きかったと見られている。


26)マンドラゴラは直接摂取しなければ、証拠が立証しにくいためである。断末魔は音によって脳に影響を与えるので、体内から毒物は検出されない。2015年、スペイン・アンダルシアでサーカスのトラが、自ら柵に頭を打ち付けて死亡した。同時期に街路樹の整備が行われており、そこにマンドラゴラの群生が確認されたことから、サーカスはマンドラゴラによってトラが錯乱状態に陥ったとして、整備会社へ損害賠償を求める裁判を起こした。トラの海馬は確かに委縮していたが、これがサーカスで酷使されたストレスによるものか、マンドラゴラによるものか明らかにすることができなかった。サーカスの責任者は、判決を前に告訴を取り下げている。


読んでくださってありがとうございました。少しでも楽しんで頂けたらうれしいです。