7. ある日の三題噺
7.1 マヨネーズマシンガン
ゾンビ大発生から、数週間が過ぎた。
自宅に籠城していたが、だんだんと食料は底をつき始め、とうとう冷蔵庫が空になった。食べれるものと言えば、大量のマヨネーズくらいしかない。しかし、わたしはマヨネーズを食べると、胃が痛くなってしまう。だからといって、町内のゾンビが押し寄せている団地の塀の外を、出ることもできない。
そこで、残っていた鎮痛剤、パラセタモールを砕いて混ぜ、“パラセタネーズ”を作った。これで、マヨネーズ食べたとしても、胃痛が緩和されるだろう。舐めてみたが、しばらくしても体調は安定していた。
それだけ食べるわけにもいかないので、団地の公園に降りると、生えている草にパラセタモール入りマヨネーズを付けて、片っ端から味見してみた。
ブーゲンビリアが意外と食べられる…と思ったその時、背後からゾンビに襲われた。塀に群がっている大群の上を、登って入ってきた奴がいたのだ。
わたしはとっさに、パラセタネーズで目つぶしを試みた。が、その照準はずれ、ゾンビの口に入ってしまった。途端、ゾンビはパタリと倒れて動かなくなった。
どうやら、パラセタネーズでゾンビを倒すことができるらしい。
わたしは家に飛んで帰ると、夏にプールで遊んだマシンガンタイプの水鉄砲を引っ張り出してきて、タンクにありったけのパラセタネーズを詰め込んだ。齧られた時のために、念のため肌にもたっぷり刷り込んだ方がいいだろう。
さあ、ゾンビ狩りの始まりだ。
(マヨネーズ、パラセタモール、たくさん(量))
7.2 イチゴのけなげ
息子が大事にしているチューインガムが、病気になってしまった。
ピンク色のつやつやした、イチゴ味のガムで、彼の大のお気に入りだった。それが数日まえからだんだんと色が悪くなり、今日はとうとう緑色になってしまったのだ。しかも、ミントのにおいまでしてきている。
わたしは息子をつれて薬局に行き、何かガムに効く薬はないかと尋ねた。
薬剤師はガムを一目見るなり、まずイチゴ味の熱さましシロップを持ってきたが、ガムは発熱はしていない。次にイチゴ味の歯磨き粉を持ってきたが、これらの症状は歯痛からくるものではないだろう。
どうも会話が成立していない。
このままでは埒が明かないので、わたしはガムを緊急病院に連れて行った。
そしてわかったのは、実は彼女が、イチゴガムではなかったということだった。
彼女は病気の予防のために毎日イチゴシロップを飲み、イチゴ味の歯磨き粉で歯を磨いていたのだ。更にミント臭も緑色も、彼女本来のものだという。そのピンクの外見は、化粧をしていただけだったのだ。
更に驚くべきことに、彼女はガムですらなかった。あろうことか、コーラボトルの破壊で悪名高き、あのソフトキャンディだったのだ。
お気の毒ですが…と始まった医者によるこの告知に、わたしは言葉もなく立ち尽くした。家で心配している息子に、この事実をどう伝えればよいのだろう。
(息子、ガム、薬局)