3.7. バジリスク:外来種としてのバジリスク
3.7. 外来種としてのバジリスク
バジリスクは江戸時代後期、観賞用、闘鶏用に輸入されたニワトリに混ざって渡来した。各国の例に漏れず、ニワトリと誤解された場合もあったが、意図してこれを「鶏」と偽ることも多かったようである (21)。いずれにせよ、輸入された個体は鎖国時代には貴重なものであり、状態がどうであれ、多くが厳重に管理された。当時極一部野生化したものもあるが、バジリスクが帰化動物となったのは明治時代以降のことであり、単純な飼育遺棄による問題が大きい。
近年でも帰化個体の数はそれほど多いわけではなく、多くは人里離れた場所や、市街地でも川べりなど人気のない自然の残る場所などに、息をひそめるようにして生息している。
時に野生個体による人的被害が報告されることがあるが、これは不用意にバジリスクを刺激したために起こることで、彼らから襲ってくることは滅多にない (22)。例えおとなしく人馴れしたバジリスクであっても、ニワトリと間違えたために被害に合うことがある。これは捕獲時にニワトリを抱くように足を押さえるため、個体の意図ではなくても毒液が押し出されてしまうからである。また不用意に背後から横抱きしようとすると、防衛器官に攻撃されることとなる。
バジリスクの帰化個体は、簡単にそれだと判断することができる。首振り運動をしないこともそうだが、オナガドリに似た尾が長く美しい生物を野生で発見した場合、十中八九バジリスクであると判断して間違いない。オナガドリは人工的に品種改良されたため、人の手を借りずに長い尾羽のコンディションを維持することができないからである。バジリスクは羽毛鱗で汚れに強く、自分である程度の毛づくろいができる。また、尾羽が生え変わる(換羽)サイクルが早いので、飼育個体と野生個体の間でもほとんど容姿の違いが見られないほどだ。形においても、オナガドリは尾羽の一部が非常に長くなるに対して、バジリスクの尾は全体的に同じ長さとなるため(尾の形だけをみれば、むしろスマトランに似ている)、見極めることは容易である。
コッカトリス型に限って言えば、毒腺を持つ関係上、距の根元が膨れて二段になって見えることも、幻想動物であるかの判断材料になり得る。ニワトリの距は、他の指とほぼ同じ太さである。
21)特に闘鶏関係者が、持久力のあるバジリスクをニワトリと偽って闘わせていた。詐欺が横行したのは単純に、「ニセニワトリ」と呼ばれるバジリスクが、タダも同然で買い取ることができたからであろう。
22)ただし、繁殖期を除く。それでも突然襲われることは少なく、大抵が巣に近づいた時点で警告の声をだして威嚇してくるので、素早く距離をとれば深追いしてくることはない。
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