098

様々な感想文を書かせていただきます。よろしくお願いしまする。

098

様々な感想文を書かせていただきます。よろしくお願いしまする。

最近の記事

髪と物語(うろ覚え)

 アニメ「PSYCHO-PASS」が面白かった。  面白かったんだけど、ふと「槙島聖護はどこで髪切ってるんだろう」と気になった。シビュラシステムでは裁けないサイコパス、槙島聖護。彼は髪を切るときに「後ろ髪は切らないでください」とオーダーするのだろうか。  そもそも、彼は髪を切ってもらうのだろうか?  アニメやドラマ、映画などで食事シーンはあれど、髪を切るシーンは比較的少ない。しかし、生きていれば腹が減るように、生きていれば髪は伸びる。  いや、腹が減らなくなっても、髪

    • 都道府県ごとの真実本

       よく行く本屋さんの中をうろうろしていると、沖縄関連書籍の題名に「真実」「本当」という言葉を含んでいることの多いのに気がついた。沖縄県内の本屋だから目立つだけだろうけど。  真実は単に一冊の本を読んで得られるものではなく、読み続けるなどの継続した関心によってしか得られないと考えているだけに、どのような立場で書かれていようと、そういった本にはささくれだってしまう。いい本もあると思うけど、お手頃に「真実」が手に入るわけない。  このような「真実」とセットになった本が多く出版さ

      • 慰霊の日

         沖縄から出て、県外に進学したときに「異郷に来たんだ」と実感したのが、6月23日が慰霊の日であるということがほとんど知られていなかったことに気づいた時だった。8月6日、8月9日のように全国民が知って当然の日付だと思っていただけに、戸惑った。ローカルな認識に留まっていたのだ。  地上戦となった沖縄戦では、20万人以上の人が死んだ。そのうち、県出身者は12万を超える。県民の4人に1人が死に、その数は軍人よりも多かった。沖縄戦を「ありったけの地獄を集めた」と形容したのは米軍だった

        • 雑記②コロナと投票率

          世界中に拡散された新型コロナによって、各国が共通の問題を抱えることになった。新型コロナのパンデミックは各国の対応の比較を可能とした。それぞれの「政治的熟度」と言ってもいいのかもしれない。 主権を持つ国々がそれぞれの方法で、押さえ込みのために策を講じたことによって、その成否が直接的に国のイメージを作り上げている。 −成功したところと失敗したところの違いは何か リーダーの素質から見ることもできるだろう。 押さえ込みに成功している国々のトップが女性であることに共通項を見出し

        髪と物語(うろ覚え)

          雑記①柳田國男とAirpods

          柳田國男の『明治大正史 世相編』(講談社学術文庫、1993)に「時代の音」という章がある。まちの音も、人々の生活を写す要素だとして取り上げる。消えていく音があれば、新たに生まれる音もある。生活様式が変われば、社会に響く音もまた変わる。 − ことに人間の新たに作り出したものは、たとえ染色のように計画のあるものではなくとも、とにかく相互いの生活を語り合っている。(…)すなわち音は書くべからざる社会知識であった。(P.56) でも、まちの音に注意を向けることは少なくなっ

          雑記①柳田國男とAirpods

          ルース・ベネディクト、阿部大樹訳「レイシズム」(講談社学術文庫、2020)

          ルース・ベネディクト、阿部大樹訳「レイシズム」(講談社学術文庫、2020)  第二次世界大戦中に文化人類学者のルース・ベネディクトによって書かれた作品の新訳。事実を軽視して差別を撒き散らすレイシストに対して皮肉や若干の煽りを交えながら反駁するルースの語り口は読んでいて面白い。そこには無知蒙昧なレイシストへの苛立ちを見いだせるのだけど、そこに学者としての使命感や誇りを感じる。だから、読むというよりは「話を聞いている」という感覚の読書体験だった。  時節柄、気にな

          ルース・ベネディクト、阿部大樹訳「レイシズム」(講談社学術文庫、2020)

          渡辺一夫「ヒューマニズム考」(講談社文芸文庫、2019)

          渡辺一夫「ヒューマニズム考」(講談社文芸文庫、2019) http://bookclub.kodansha.co.jp/product?item=0000326883 フランス文学者の渡辺一夫が、16世紀フランスで活躍した作家や神学者を中心として、ルネサンス期の傾向・思潮であるヒューマニズム、ユマニスムとは何ぞと考える作品。 「human-ism」と記されるように、「ism」というと思想信条・主義主張のように捉えられるけど、渡辺は「『それは人間であることとなんの関係があ

          渡辺一夫「ヒューマニズム考」(講談社文芸文庫、2019)

          映画「彼らは生きていた」(2018年、ピーター・ジャクソン監督)

          1914年に勃発した第一次世界大戦の映像を修復・色付けし、音声を加えて3D映像化した作品。イギリス帝国戦争博物館に所蔵された数千時間の映像が基となっている。ジャクソン監督はBBCに残っていた退役軍人の体験談をナレーションとして映像と重ねた。それに風の音や馬の蹄がなる音、リュックのジャカジャカとした音が人工的に加わり、より正気を帯びた。 ドキュメンタリーでよく見る、体験者が椅子に座って「あの時は〜」と話すようなシーンはなく、ただただ当時の映像とナレーションだけで構成され、現在/

          映画「彼らは生きていた」(2018年、ピーター・ジャクソン監督)

          ジョジョ・ラビット(2020年、タイカ・ワイティティ監督)

          ジョジョ・ラビット(2020年、タイカ・ワイティティ監督) http://www.foxmovies-jp.com/jojorabbit/ 「戦争への辛口なユーモアを効かせたハートフルなコメディの形をとりながら、困難の中にあっても輝く希望と生きる歓び」を描いた映画だと紹介されているが、ジョジョの「無邪気さ」が際立った映画のように感じた。戦争映画としても、コメディとしても中途半端だった。劇場では「いやー、いい映画だったなー」と耽ったけど、帰路では「んー、ん?」となる。 ジ

          ジョジョ・ラビット(2020年、タイカ・ワイティティ監督)

          『記憶する体』(伊藤亜紗、春秋社、2019)

          『記憶する体』(伊藤亜紗、春秋社、2019) 多様な障害を持つ12人の「体の固有性」について記した本。それぞれの身体の記憶性を探っているはずが、読んでいるうちに自らの身体と対話しているように感じるから不思議。「おい、お前はどうだ」と自らの身体が他者として現れ、対話する。知見を広げる読書というより、感覚を深めることができた読書で非常に有意義だった。 エピソード8の「VRは思い出体験」はなんとなくわかるような。サッカーをしていたからか、サッカーゲームでスライディングボタンを押

          『記憶する体』(伊藤亜紗、春秋社、2019)

          「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」①(片渕須直監督、2019)

          すずさんの戦争はいつ始まったんだろう。 呉に空襲が来るようになってから? お兄が兵隊に行ってから? 北条家に嫁いでから? 日常と非日常(戦争)に明確な区切りはなく、ぼんやりとしたグラデーションがあるだけなのだろう。 映画の題字がぼんやりとしている。 戦時下だろうが、人々はたくましく生きている。 配給が少なくなれば、工夫を凝らして生き抜く。 でも、その「たくましさ」は戦争の前ではあまりに非力だ。 4月3日、すずさんたちは花見を楽しむ。 その2日前には沖縄に米軍が上陸して

          「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」①(片渕須直監督、2019)

          「家族を想うとき」(ケン・ローチ監督、2019) ①リッキーに希望はあるか。

          ケン・ローチ、やっぱすげえわ。 そういう通ぶった感想を用意して見てきた。 ケン・ローチのプロフィールは何も知らない。 顔も、過去の作品も知らない。 とりあえず、映画通たちが絶賛している通りの感想を用意して見てきた。 舞台はイギリス、ニューカッスル。 「ギグ・エコノミー」なるネットを介した企業と「個人事業主」として契約を結んだ主人公・リッキーと家族の物語。 パンフレットには「いったい何と闘えば、家族を幸せにできるのか」の文字。 この映画で戦うべき相手の姿は見えない。 主人公

          「家族を想うとき」(ケン・ローチ監督、2019) ①リッキーに希望はあるか。