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【第5話】失恋の傷を埋めるためのアプリ婚活|新たに現れた結婚相談所の選択肢

前回のお話▼

マッチングアプリでの婚活は、いつしか私の精神安定剤になっていた。毎日何件のいいねを押したとか、何人の人とやりとりをしたとか。自分の行動が数値化されるたびに「私は結婚に向けてきちんと行動している」と承認されている気になる。

メッセージをしながら会う約束をして、実際に会うことだってしているのだから、私は頑張っている。

錯覚ではなかったのかもしれないけれど、絶対に結婚したいという強い思いがあるなかでの行動だとしたら、かなり無謀な努力をしているのは明らかだった。

やればやるほど安心感は増すけれど、1年以内に結婚したいという夢は叶いそうにない。そんなことは冷静になればわかる話だ。

でも、マッチングアプリが婚活ではなく自分の心を癒すための行動にすり替わっている私は、まったく気づいていなかった。

「毎日20人くらいの人と同時にやりとりしててさ、メッセージの返信だけで1日が終わっちゃうんだよね」

笑いながらネタとして友達にそう話すと「そういえば最近、結婚相談所のカウンセラーさんと知り合ったんだよね」と彼女は言う。

実は結婚相談所は、すでに妹が利用していた。当時の私はまだ元彼と付き合っていたから、自分が結婚相談所を利用する選択肢はまったく頭になかったけれど。

「友達の知り合いだし」と、軽い気持ちでカウンセラーさんを紹介してもらうことになった。結婚相談所なんて頭になかったから、予備知識なんてほとんどない。妹から「長くやるもんではない」と聞いていたくらいで。

「今はマッチングアプリで、毎日20〜30人くらいの男性とメッセージのやりとりをしているんですよね」とカウンセラーさんにも話すと、カウンセラーさんは驚きと戸惑いの混じったような表情をしている。

「それだけ本気で行動できるんだったら、絶対にそのエネルギーを結婚相談所で発揮したほうがいいと思う。マッチングアプリは本気で結婚したい人に出会える確率はかなり低い。結婚したい時期も明確なんだったら、アプリだと消耗してしまうと思う」

彼の表情は神妙で、言葉に嘘はないようだった。「自分のお客さんを増やすため」という意図はそこにはなくて、初めて会ったにも関わらず、結婚したいという私の気持ちに本気で寄り添ってくれているのを感じる。

「結婚相談所かあ」

元彼と別れてから1か月もしないうちに、思いもしなかった方向に話が進んでいる。これも人生のタイミングということなのだろうか。

たしかにマッチングアプリをやっている間は、自分が何かしらの行動をしているという実感は得られる。でも一方で、結婚に近づいている感覚があるかと言われたら、自信をもってあるとは言えない。

結婚に対する自分の熱量を結婚相談所でぶつけたとしたら、行動に伴って実際に結婚へと近づけるのかもしれない。

このまま現実が変わらない可能性が高いマッチングアプリで活動を続けるのか、大きな変化に賭けて結婚相談所への活動に飛び込むのか。運命が変わってしまうかもしれない期待と不安の間で、私の心は揺れていた。

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