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【第4話】マッチングアプリで始めた仮初の婚活|自分の心に向き合いきれずに
前回のお話▼
「つむぎさんに会ってみたいです」
そう言われることが増えてきて、私のスケジュールは順調に埋まっていく。昔から予定に空きがあると不安になり、予定が埋まっていると安心感を覚えていた私。
今回も例に漏れず、マッチングアプリでやりとりをしている男性との会う約束は、そのまま私の安心感へとつながっていった。
実は私は、今までお付き合いをしてきた方は全員、同い年の男性だった。だから年上の男性とも年下の男性とも、恋愛関係に発展したことがない。
やりとりが続く男性は不思議と年上の方が多く、会う約束につながるのも自然と年上の方ばかりになる。果たして年上の男性がどこまで私の中で恋愛対象に入るのか、私自身も手探り状態での出会いだ。
実際に会ってお茶やランチをして、お互いのフィーリングを確かめ合う。でも誰と会っても、私の心がときめくことはなかった。
過去に一度たりとも一目惚れをしたことがない私。もしかしたら2回目、3回目とデートを重ねていけば、好きになるものなんだろうか、というわずかな期待も頭をかすめるけれど。
残念ながら、そもそも2回目のデートをしたいと思える男性が現れない。「また会いたい」と思っていないのに2回目の約束をして気が重くなる失敗は、20代半ばの婚活で痛いほど思い知っていた。
とはいえ、自分の感覚をあまり信じられていない私にとって、率直な感覚を信じて「会わない」という選択をすることは、ものすごく勇気のいる決断だった。
こんなふうに人を判断してしまっていいんだろうか。この人のことを素敵だと感じる人もいるはずなのに、私なんかの基準で選んでしまってもよいものなのだろうか。
自分に対する疑いの心が強すぎて、何を判断基準にしたらよいのかわからなくなる。自分にとって居心地のよい人は自分にしかわからないはずなのに、肝心な自分の感覚を信じられないのだから、本当にややこしい。
暗中模索とはまさにこのことで、人に会っては疲れ果てて帰る毎日が続いた。もちろん会っている時間はそれなりに楽しめていて、元彼のことを考えなくてよかったのは救いだったのだけれど。
元彼のことを考えないために人に会っているのか、運命の相手を探すために会っているのか。
行動していればつらい気持ちを感じなくて済んで、それが結果的に求める未来に少しでもつながる可能性があるのなら、無駄にはならないんじゃないか。そんな打算的な考えで動いていたというのが、正直なところだった。