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大阪の郊外を旅した話


「今度の土曜日に大阪に行きたい」と妻が夕食のときに言うので
「おお、いいねぇ。行こういこう」とふたつ返事で答えた。

吹田市で開かれる、二見光宇馬さんという作陶家の方の個展に行きたいのだという。
それと富田林にあるカフェに行ってみたいと。

東大阪と八尾に10年住んでた僕だけど、吹田と富田林はだいぶ離れていてあんまり、、というかぜんぜん土地勘がない。
まぁなんとかなるでしょとギャラリーとカフェの場所をブックマークした。


当日は9時に出発した。10時すぎに淡路島のサービスエリアに入って早めの昼食をとる。
妻と日帰りの旅行に出るときはだいたいSAでカレーを食べる。
淡路SAのカツカレーはカツが大きくてサクサクで美味しい。
今日はいつもよりちょっと大盛りになっている気がして、なんだか嬉しくなる。

サービスエリアのカレーでしか摂取できない栄養がある気がする。
温かいお茶が嬉しい季節になった
徳島ラーメンのポテチがあった。帰りに買おうと思ったら下りのSAにはなかった。


くもり空の下、高速をひた走って無事にギャラリー近くにある公園の駐車場に車を停めた。
公園と中学校に囲まれた住宅地は大きくてきれいな家ばかりで、部活動なのか中学校からは生徒たちの歓声が遠くから聞こえてくる。
高級な住宅地の真ん中に、目立たないように控えめに案内を出していたギャラリーがあった。

学校の廊下って雰囲気がどこも似てる気がする



入ってみると思っていたよりもたくさんの人が集まっていて、広いテーブルいっぱいにとても小さな焼き物が置かれている。
いくつあるのかちょっと見当のつかない数の、このひとつひとつが仏像なのだという。
自分たち夫婦よりも若い年代の女性たちが、熱心に仏像に目を凝らしていた。

こんな感じでめちゃたくさんあった。



老眼の進んだ目でよく見てみると、それぞれどれも形がちがい、小さいのに表情を感じる。
それほど広くないギャラリーには作家の二見さんが在廊していらして、来場者の質問に丁寧に答えていた。


おだやかな空気をまとった二見さんは見ればまだお若い方だ。
如来さまや菩薩さまなど像には装具や姿でそれぞれ名前があることや、由来や歴史の背景などをよどみなくお話しされていた。

また像にはそれぞれに極小の付箋が貼られていて、分厚いカタログを開けば、図鑑みたいに書かれた番号から名前などを自分で調べることができる。
妻に連れられてきたはずの僕も面白くなってきて、気になった像を手にとってカタログを開いたりお話を聞いたりしていた。

中には仏様じゃなくて亀とか鷺とかもいる


妻と僕と、ひとつづつちいさな仏様を購入し、ギャラリーを出てから今度は富田林まで向かう。
バーっと1時間ほど高速を走って、大阪の北の方からドーンと東南の かどっこあたりまで行くと富田林に着いた。

近鉄富田林駅前の街並は下町の匂いが色濃く残っていて、居酒屋や美容室やお菓子屋など個人商店が立ち並んでいる。
学生時代を近鉄沿線の下町で過ごした僕には、初めて来た街なのにとても懐かしい。

模型店があってワクワクしたがどうやら閉店しているみたい
路地はどこに行ってもつい撮ってしまう

昔の商店を改装した建物の中に、目的地のちいさなカフェがあった。


厨房と会計場が一緒になった場所で注文とお会計をして、となりの部屋のテーブルで待つというスタイルらしい。
会計場やカフェスペースにはレトロな食器や小物、本などが置かれていて、昭和の古い小物が大好きな僕たちはそれらを見たり、写真を撮らせてもらったりしながら居心地のいい空間を楽しんでいた。

曇り空だったけど、暗いところに空から光が差してきれいだった



置かれている調度品や売られている小物や古書を見ていると、さっき注文をしたときのカフェのご主人のおだやかで人懐こそうな様子をよく表しているようで、こちらもおちついた心持ちになる。

しばらくして運ばれてきたスープとマフィンは、思わず顔を見合わせるくらい絶品で、夕方で気温が下がってすこし冷えた身体をあたためてくれた。

マフィンは胡麻みそとリンゴ。どちらもめちゃ美味しい
巣箱っていいなぁ。うちも掛けようかな


帰りに妻は谷川俊太郎氏と鴻上尚史氏の共著の本、僕は小さめのロックグラス、それとコーヒー豆を買った。
徳島から来たと言うと、遠くからわざわざとご主人はとてもおどろいて、米粉のセサミクッキーをおまけしてくれた。

大きなさつまいもは後日芋あんになさったとのこと



雨が少し降りはじめた中コインパーキングを出て、近くのインターから帰路につく。
淡路島に入ったあたりで本格的な降りに変わったが、道中妻と今日あったことを楽しく話しながら車を走らせた。


ここまで来たらほっとする。家までもう少し


家に無事につくと雨も小降りになって、夕食の時間を大幅にオーバーした猫たちがおおさわぎで迎えてくれた。

まだ夜も早いけれどお腹も満たされているから、すこしホットウイスキーを飲みながら、おしゃべりの続きをしよう。

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