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プロ意識とプロ
プロ意識ってなんだろうか。プロってなんだろうか。
昼食どき、よく使う立ち食い蕎麦屋がある。
蕎麦屋とは言うが、基本的に私は「もつ煮込み丼(650円)」を頼んでいる。これを頼むと自家製ラー油をかけてくれるのだが、これがまた絶品なのだ。なお「ラー油どうしますか?」の問いに対し「多めにかけてください」の問答をしすぎたのか、最近はラー油を瓶ごと渡してくれるようになった。
今日も今日とてお邪魔し、いつも通りカウンターへもつ煮込み丼を注文。厨房はにこやかな若めのお兄さん(いつもいる。多分店主)とおばちゃん(多分パート)のツーマン体制。
コップに水を注ぎ待機し、なんとなく厨房での会話に耳を傾けていると、おばちゃんが
「やっぱり昼時はお客さん多いですね。入れ替わりもすごいので、私頭がこんがらがっちゃいそうで」
とお兄さんに。それに対してのお兄さんの返答が
「注文は基本俺が受けるよ。俺は絶対に注文をトバさない(間違えない)から、俺が合図したタイミングで麺を茹でてくれれば大丈夫。ピークでも1人3分くらいで提供できるよ」
と答えた。
この店はカウンター席のみの早出しスタイルだが、天ぷらは都度揚げのこだわり揚げたて提供系。蕎麦の種類も多岐にわたり、それぞれ蕎麦orうどんが選択可能。
揚げ物だって天ぷらだけでなくかき揚げやゴボ天、とり天、ナス天など多数の種類がある。
加えて、カレーや生姜焼き丼、私が愛してやまないもつ煮込み丼等、飯物まである。
つまりどう言う事が言いたいか。多岐に渡る質問を全て口頭で受け付け、席配置と注文を記憶し連携。麺を茹でる傍ら、天ぷらを揚げ、盛り付けて提供する。これをものの3分でやってのけるというのだ。
当然、この工程の合間にも容赦なく注文が飛び交っている。
いや、飲食店なら当然である事は重々承知の上だが、これをお兄さんは
"絶対に間違えない"
"合図の通りやれば大丈夫"
"3分で提供できる"
と言ってのけた。
そしてそれを宣言している間にも、俺のもつ煮込み丼を含めて店内のお客さんに次々とご飯がサーブされてくる。
自分の担当領域を明確にし、「絶対に間違えないから」と自信を持つ。
尚且つ、担当領域の責任は自分が背負う事で、一緒に仕事をしている相手に安心感を与える。
何よりも、お客さんに対してのコミットも忘れず、全てを有言実行してみせる。
なるほど、これがプロ意識であり、プロなのだ。
自家製ラー油による華厳ノ滝のような汗をかき、尻を叩かれるようなもつ煮込みの味に舌鼓をうちつつ、街角のプロへのリスペクトと一緒にしっかりと味わい飲み込んだ。
雨はもう止んだようだ。