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それは、デザイン案ではない。
「デザイン提案」についてずっとモヤモヤしてることがあって、今回の「キヨ地下」のロゴ提案がちょうど伝わりすい事例なので書いてみた。ぜひ、若いデザイナーや学生に読んで欲しい。結論からいうと、「ロゴ案とは色や形の違いではない。」というのを訴えたい。
アソビカタサロンのオーナーのKiyoto(萩原清澄)さんが「キヨ地下」というサービスを始めた。一言でいうと「デパ地下グルメのECサイト版」。そのKiyotoさんバージョンなので「キヨ地下」だ。多方面から食に関して絶大な信頼をおかれているKiyotoさん。魅力的な商品ばかりが並んでいる。
「キヨ地下を始めます!」とTwitterで見かけた瞬間に、ズババッ!とビビッ!!ときた。すばらしいコンセプトと企画力、ネーミングだよね。「これ絶対良いデザインになるやん!」と僕のデザイナー嗅覚が反応した。すぐさま「ロゴデザインをやらせてください」と声をかけていた。
今月最後の販売を開始しております。
— キヨ地下 (@kiyochika7) October 19, 2019
土日にて販売停止となります。
(売り切れ次第終了です) pic.twitter.com/pFQfcYy2o5
どれも本当においしそうなのよね…
で、ロゴを作らせてもらうことになった。こういう場合はスピードが命。そのまま集中して、速攻でロゴ案を8案考えた。5時間フルに集中していた。コンセプトが明快だから死ぬほど作りやすい。僕の経験上、良いコンセプトからしか良いデザインは生まれない。
ここからが僕が伝えたいことだ。
ロゴ案は色や形の違いではなく、「コンセプト」の切り口がまったく違うものを提案すべきだ。これが意外にもプロのデザイナーでもできてなかったりする。あなたは見た目のパターン違いのロゴで案の水増しをしていないだろうか?
以下、実際にKyotoさんに提案した資料を公開します。
「キヨ地下」ロゴデザイン提案書
A案 「新しい老舗」
未来の “ネットグルメ” の老舗。Kiyoto さんはネットグルメショップの第一人者になる。老舗っぽいけどハイセンスなもの。
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B案 「コンシェルジュ(ボウタイ)」
Kiyoto さん=サービスマン “食への信頼感と安心感” Kiyotoさんといえば、サービスマン。そういう書籍を出版している。
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C案 「≠(ノットイコール)他とは違う」
Kiyoto さんのチョイスは他では得られないもの。他との違いを強調する。
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D案 「地下への入り口 ワクワク感」
Kiyoto さんの秘密の穴ぐらにはしごで降りていくワクワク感。
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E案 「地下アジト(ひみつ基地)」
Kiyoto さんの秘密の穴ぐら おいしいは楽しい。キヨトの相棒「アジトくん」(正式に名前はペロチカくんになりました)
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F案 「UNDERGROUND の「U」が舌というブランドマーク」
「下マーク」将来的に、スタバやナイキ、マクドナルドのようにマークだけで認知させていく。
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G案 「ひみつのグルメ倶楽部 ▶ 暗号文字にする」
知っているだけが知っている「キヨ地下」というのを暗号文字で演出。こういうトンがった案は必ず入れたい。
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H案 「おいしい認定印「キヨ」のマーク」
“モンドセレクションなんか何にでもついている。「キヨ印」マークがついたほうが価値がある!” という展開を期待。マーク展開。
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プロのデザイナーは、安直なデザインパターンを作ってはいけない。ロゴの形や色、書体で案を出しても何の意味もない。その選択をクライアントに委ねてはダメ。それはデザイナーの仕事だ。
逆に「コンセプト」を僕らデザイナーが選んではいけない。クライアントにしか選べない。「クライアントがどうありたいか?」の志だから。提案する時にオススメは伝えるけどデザイナーが決めることではない。色や形、書体はを決めるのはデザイナーの仕事だ。
ロゴの形や色、書体で提案書を作ってしまうと何が起こるか。「なんかこれ好き」「これ、かっこいいね」と選ぶ人の好みになってしまう。成したいことを成すために必要なデザイン。高額のデザインフィーを支払って、デートに着ていく洋服を選ぶノリで決めて良いのだろうか。
デザインは真剣勝負。クライアントが真剣に「どうありたいか?」て決めて欲しい。ここだけの話、高額のフィーは、選ぶ側に真剣さをもたらす作用がある。そういう意味では、なるべく高額のフィーで仕事がしたい。多数決で決めるのは好ましくない。コンセプトは人に決めてもらうものじゃない。最後は自分が決めるもので自分の志だから。そもそも、ロゴの形や色や書体を世の中ではデザインと呼ばれていること自体に違和感を感じる。
「キヨ地下」のロゴはTwitterで公開され、決定に至るまでを物語にした。それを見て人は巻き込まれていく。このあたりがKiyotoさんの天才的なところ。最初に4案の志を選らんで、Twitterでアンケートをする。これをみた人は脳の中に「キヨ地下」が侵入する。つまり、たくさんの人が自分事化する。
天才前田さん @DESIGN_NASU から「キヨ地下」ロゴデザイン案が上がってきた。
— Kiyoto / 萩原 清澄 (@KiyotoDrives) August 14, 2019
発想が、めっちゃおもしろい。
どれにしようかたいへん悩む。 pic.twitter.com/XhKQlA5R7e
最終的にこちらのロゴに決まった。裏話をすると、実はTwitterのアンケート取る前にKiyotoさんが「これかな?と選んでいたものに決定している。これにはビビった。
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そして、もう一つのロゴ案がキャラクターとして採用された!
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(キャラクターのペロチカ)
この「キヨ地下」。なんでKiyotoさんがやってるか?を聞いたことがある。「遠方でおいしい食をみんなに届けたい。」というところから始まった。今は満席で入れないけど、今だけ会員じゃなくても買えるらしい!この醤油塩が買えるのは今だけ。見てもらったらわかるけど、ほとんどの商品がSOLD OUT。早めに購入することをおすすめする。こちら→ キヨ地下
と、いうことで、デザイン提案についての持論をようやく書けました。「色やフォント」は、デザイン案ではない。切り口で探すこと。
だからこそ、良いデザインの可能性が広がるのだ。
(追伸)実は弊社NASUで餃子プロジェクトを進行中でして、Kiyotoさんにアドバイスをもらってます。うまくいけば「キヨ地下」でとりあつかってくれるかも…!
この記事が良いなと思った方は『勝てるデザイン』がおすすめです。デザインが関係ないという人にこそ読んで欲しいです。
※デザイナー草野剛さんとの対談動画も特典としてついてきます。