夏の終わり、そしてある釣り人の幻想。
朝靄と木漏れ日、そして川の水音。自分と竿が川の流れと一つになった時、突然の目印の不規則な揺れと強烈な引き込み。竿が満月のようにしなり、狂おしいほどのスリル。やっと取り込めた時の安堵感。スイカの匂いのする香魚の姿に惚れ惚れする。清流の女王、そう鮎。
それが3回も続くと我は天才かと勘違いする。しかしフッと糸切れしてしまう時、全て流され竿先だけがプランプランと揺れてお前は馬鹿かと笑っている。誰かに見られてやしないかと周りを見るが、お前のことなんぞはだれも…。だがそんな絶望の中