月組『フリューゲル / 万華鏡百景色』(2023/8_1回目)

これまで悉くご縁がなかった月組さんと、ようやく結ばれたご縁。
楽しみ〜なんて軽い気持ちで座ったら、それを遥かに上回る素晴らしさで軽く放心状態でした。あまりの衝撃で、帰りの電車で感想を打ち込む指が頭に追いついてなかった。その指で人生初の追いチケまでした(立ち見がギリギリ残ってて幸運)。


座席:1階20列上手側

近い。普段より扉が1段下でびっくりした。こんなにはっきり見えるのね。センステでも大体誰が何をしているのか分かるし、「人間が動いている」と理解できる。あと生歌を声として認識できる。最初のハイハットの振動が足に来てびっくりした。ただ、見えすぎるからか舞台のあっちこっちに目線がいってしまうところはある。ホールとマイクの声の圧!みたいなのより、人間的な声の厚みを感じた。特に上手側に来られるとめちゃくちゃはっきり見える。

フリューゲル

初めて月城かなとさん、並びに月組の皆さんを見て、すごくしっかりしっかり丁寧に作り込まれるなと感じた。あれだけ訴求力のあるビジュアルをお持ちでいらっしゃるのに、力でゴリ押ししてこない緻密さを感じたのはすごく意外だった。意外だったからこそ、ぐっと引き込まれた感覚がある。

序盤

軍服姿の月城さんがあまりに格好よくて怖い。
クールピキピキ堅物キャラ大好きなのでどストライクでした。しっかり身体の厚みが表現されていて、実に「ノーブル」な立ち居振る舞い。軍人としての信念とか、その他もろもろがぐっっっと詰まっているのを感じた。

思ったよりちゃんと東西ドイツの話なことに序盤で気付く。どうしても説明の場面、急ぎの場面が続くから結構頭がこんがらがる。この辺は2回目に期待かな。

ナディアのライブシーン、かなり音響も大きめでとっても良かった。一気にライブ!!感が出たし、それに負けないぐらいの歌上手でした。月城さんもそうだけど、このトップコンビさん本当に歌が上手い。安定感がすごいのが序盤で伝わってくる。

軍の事務所でみんなでやいやい言うシーンがとても良い。なんかドラマみたいな軽快な掛け合いで、ここだけのスピンオフとかないですかね...…。ヨナスの誠実さ、軍への気持ちとかがここでしっかり描写されてて良い。食い下がるところ本当にかっこいいなと思いながら見てた。何してても本当にかっこいいな…が一旦挟まる。

そこからヨナス&ナディアのシーン、テンプレ反目ありがとうございます。銀橋で歌うシーンは約束された勝利の恋路。ヨナス、あの綺麗な顔から「はしたない」「トンチキ」などのキレッキレ突っ込みが聞けて心からの感謝。

鳳月杏さん、軍服を着るために生まれてきたんかというぐらいの骨格。スマーーートに着こなされるし、ヴィラン側がとんでもなくよく似合う薄い唇と鋭い眼ですこと……もう少し人間味というか、動機の掘り下げ回があれば人気キャラまっしぐらだと思う(存在しないスピンオフへの期待)。

中盤(夜間観光〜)

ヨナスとナディアの夜間観光とっても良かったな~~振り回されるヨナスすごく良いし、堅物キャラの少年っぽさが垣間見れるなんてオタク大好きなやつだから......そして無邪気に楽しむナディアのキラキラさよ。監視塔で背を向ける2人がものすごく映画的な絵になる感。ちょっといい雰囲気だけど、同志!なこの関係性とても良い。

サーシャを逃がすシーン、捕まっちゃうヨナスのおよよ感がとても可愛かったです。照明もパープルピンクに染まってからナディアの機転の効かせ方、これ、これ二次創作で何万回も見たやつ!!🫢🫢🫢なヨナスがとても良かったです。

結局諸々バレて捕まるシーン、拷問にかけられて……のところ、もう本当にオタクが好きなやつすぎてちょっと笑ってしまった。めちゃくちゃかっこいいが?軍服の厚みってどうやって出してるんだろうなあれ。ヨナス、見た目は結構模範的軍人ですという風なのに、やってることは結構破天荒なのとても良い。決行前夜に教会に顔出したりしてるし。ここで助けてくれるあの詰め所メンツ最高~ここのスピンオフを以下略。

後ろの方が騒がしいな...…。と思ったらここで客降り!!怪しい物がないか検査する感じで来られて、あ、同じ場所を共有してる!という嬉しさ。
飛入りヨナスは歌上手なので問題ないし、マイク!マイク!!の緊張感と若干のコメディ感がとても良かったです。フリューゲルが心に沁みる。ヘルムートの「すぐに撤退する!」が潔くて良い。やっぱりここもうちょっと掘り下げ欲しいな〜きっとヘルムートも知れば響く良キャラだと思うんだけど。

ヨナスが待ってるあの監視塔、後ろ向きのヨナスがグッドルッキングガイすぎてなんかものすごかったな~ここまで恋愛ムードにならないの結構珍しくない?この辺りでくると思ってたけど。

終盤(壁崩壊〜)

壁のシーン、ぐるぐる盆が回って代わる代わるに喜びの歌をドイツ語で歌っていてすごく鳥肌がたった。きっとこんなんじゃ、こんな綺麗じゃないんだろうけど、それでも雄大さを見せつけてくれてありがとうの気持ち。宝塚の持てる力を最大限に利用した素晴らしい演出だったと思う。本当に壊れると思ってなくてびっくりした。ここでヘルムートが自決しちゃうの、あまりにも「それ」な演技で震えてしまったな。「解」すぎる演技がすごいのよ...。あの一瞬の説得力たるや。恐ろしや鳳月杏さん。

最後、西側でおそらく軍章?を投げ捨てるヨナスの晴れ晴れした顔が印象的。最後まで反発...というか小競り合いをして、それでも戦友感が若干抜けきってないこの関係性いいな〜これから先、結ばれてもいいし結ばれなくても良い。控えめに腕を組んだナディアとヨナスの影が、上手側からだと壁に綺麗に落ちているのがよく見えてとっても良かった。

いろんな名前の翼を与え合って、最後はとっても爽やかな結末でした!ストーリーもそこまで無茶はないし、演技力という名の説得力増し増しでものすごく綺麗な作品!とっても好き。

舞台装置

羽のような縁取りがとても綺麗で、たぶんもっと引きで見たら絵画のようなんだろうなと思う。緞帳を下ろしてから、スクリーンとしてがっつりイメージを映す使い方も見事。舞台というよりミュージカル映画をみたような感覚になる。作り込まれたセットで、見てるだけでとても満たされた。


万華鏡百景色

すっっごい。ずっとずっと凄い。なんだこれ。新しい宝塚の可能性を見た。栗田優香さんの大劇場デビュー作品と聞いて、新しい方か~ぐらいにしか思ってなかったけど大大大正解だこれ。あとから夢千鳥の方だと知ってなんか納得。一本筋が通ったショーで、本当に素晴らしかった。

江戸

最初、万華鏡を覗く女の子→透けた帳から見える世界がもう万華鏡の中。付喪神の鳳月さん、狩野姿?黒地に赤のスパンコールがギラッギラ光ってすごく妖艶。バン!と銀橋のセンターで歌うお姿がものすごく神でした。そこから(多分)背を向けて奥にいらした月城さん……。
花火師の格好で、今と昔がうまく取り入れられた温故知新和服、綺羅びやかだけど隠しきれない品があるのが素晴らしかった...この辺雰囲気に飲まれすぎてあんまり覚えてない(笑)月城さんが歩くたびに道を開けるような番傘の赤が妖しさに拍車をかける。アイメイクが黒系の濃いめで、上向き下目線のときのお顔があまりにも麗しすぎて呼吸とまった。元々のお顔が柔らかいから強くされてるのかな?すごい。海乃さんが重そうな花魁衣装で登場。艶やか.……。身請けが決まってからのシーンの深まりようがすごい。そりゃ夜逃げになります。浮世絵の世界に入り込んだようで本当に良かった。
逃げて逃げられなくて、霞んでもはや幻想みたいだけど、もう少し形がある煌めきがギリギリのリアリティ。本当に素晴らしい。
テーマ曲がたぶんここで一回歌われてて「絶景かな、絶景かな」とか「玉響」とか、なんか儚さも含むフレーズと花火がよく合ってて良かった。ぐっと上を見上げる月城さんの目にしっかり光が射して、なんて美しい光景なんだろうと心から思った。そしてここから輪廻転生が始まっていくストーリーへ。

鹿鳴館

ガラガラ音がすると思ったら凄い電車の風景が出てきてびっくりした。今回はかなり移動式のセットが多いように感じた。ここから銀座のレトロでポップな雰囲気がとっても素敵。鹿鳴館だったと思うけど、世界で一番プリンセスな海乃さんから、バーンっと開いた扉には純白のプリンス!誰が!どう見ても!プリンス!!すげー!!!!唯一西洋のクラシックがここだと記憶してるけど、要所要所の花火も相まってとってもゴージャスかつ儚さもありとにかく王子様がすごい。すごいよ何...??

地獄変

からの地獄変。地獄変であることは後から気がついたけど、この辺からなんかもうすんごいことになってると気づきましたね...。着流し?姿の鳳さんでもう文豪なのに「見ずには書けぬ」と娘さえも見殺しにして、血気と殺気と狂気と全部混ざった表情に、奥に乗った娘と大輪の彼岸花ですって.....もう、ね.....。赤い布を綺麗に使ったパフォーマンスで、燃え盛る車がうまく表現されていた。ここのシーンかは忘れたけど、要所で雨がザーッと降っていてそれも相まってもうすごかった。ギリギリの美しさ。これは何回でも見たい。一回じゃ消化しきれない。

闇市

バチバチレイヤードの月城さん!マフィアのボスみたいな重たい重たい服にハットで下手側に現れたと思ったら、ライトもつかない薄暗がりでタバコの小さな火だけが灯るの何...?もう本当に何...?なんか本当に怖くなってきた私特効すぎ。チャラめの出で立ちだけど、海乃さんをふっと追いかけるのは輪廻の定めだな~あーー触れそうで触れない手がもどかしく、そのまま消えていった海乃さんを探すようにだけどもう居ないんだ〜〜月城さんが孤独な男を演じるのがめちゃくちゃ好みだと気付きました。演技が上手すぎるしお顔立ちも相まってかもしれないけど....。ハットを被ると一瞬朝美さんぽく見えるところもあったり、でも月城さんはよりしっとりしてる気がする。朝美さんはビビッド。

中詰

ピンク衣装!ショッキングピンクをお召しなのに溢れ出る風格たるや!客席に照明がバッっと当たってここか...…となった。ねりねり歩く月城さんの圧倒的キング感が本当にすごかった。あれ真正面で受けられる自信ない。場所的に厳しかったので次は月城さんメインで見たい。けど、今回はすぐ隣に娘役さんがたくさん!にこにこ笑顔でしっかり生歌で、骨格から違うレベチの小顔&スタイルでびっくりした。お人形さん。シンプルにめっっちゃ可愛い。あとなんかホワイトフローラルみたいないい匂いがしました。

平成

打って変わって都会のシーン、ストリートな若者が知ってる曲を……ってこれSTAY TUNEでは?!知ってる曲が流れるの、とてもとても新鮮。地下鉄のシーンではKing Gnuが流れてたみたいだし、けっこうポップス多めで嬉しい。クラシックもいいけど、取っつきやすい歌だとまた違った楽しみがあるな。黒と白の都会の駅。プログラム未読だから月城さんが何役か分からない(カラス?でも人には見えてるよう?)けど、ここでも因果な輪廻が.....。傘や雨、シティな雰囲気が全面に出て、これもまた東京アンソロジーということ.....おみそれしました。

フィナーレ

下手側で何語か分からない歌が始まって、娘役さんに囲まれて大階段にいたのは……鳳月さん!相変わらずのスタイルの良さ。この方本当にショーをするために生まれてきたんだと思う。イントロで知ってる曲な気がして何の曲だ...?と思ってたけど、合点がいったときの震えがすごかった。目抜き通り!!ここまで何となく感じてた雰囲気の答え合わせになっているようで、ピタッとパズルのピースがハマった感覚。
朗々とした歌声と、赤とゴールドの配色で本当に銀座を往来しているよう。ここもう一回聞きたい。本当にすごいからもう一回聞きたい...!からのデュエダンが始まりびっくりした。
海乃さんのスカートさばきが綺麗すぎる。和テイストも若干入れた燕尾のお衣装が、これまでの総集編のようでとてもとても良かった。互いを指しながらくるくる回るこれが、二人だけの空間を覗かせていただいてるこれが、正にデュエダンの醍醐味だと思う。上品此処に極まれり、なラグジュアリーな空間に居られて幸せでした。多幸感ゴールド。

そしてフィナーレへ。鳳月さん、黒羽って初めて見たけど、めっちゃくちゃにお似合いでした。たぶんこの方クリアじゃなくてディープだな。濃いめのお色がとにかく似合う。月城さんは白×ゴールドで、羽かな?に放射状のラインストーンが付いてたような?直線的な要素があってそれがすごく印象的だった。本当にお似合いでした。
そのまま「絶景かな絶景かな」と銀橋を練り歩く様はどう考えても藤原道長だった。この世の全ては貴方のものです。全体を通してしっかりあるストーリーも面白かったし(たぶんパンフ見たらもっといろいろ分かるはずだけど)、雰囲気の作り方・入りこませ方の演出がピカーでした。

月城さんは、もともとかなり優しい上品なお顔だなと思っていたから中性的に感じるかと予想してたけど、バッチバチの男役でした。メイクや演技で鋭さを足されてて、立ち居振る舞いの堂々とした風格に、恐らく持ち前の上品さ・丁寧さが足されていて、この雰囲気はなかなか出せなさそうだと思ったり。
力でゴリゴリ押すのは分かりやすいしインパクトもあるけど、ゆっくりしっかり圧をかけるようなスタンスがとても好みでした。好きな方がどんどん増えてしまう~~。
特にショーだけでも見る価値は本当にあるし(宝塚初心者向きかも)、柚香さんのようにいつ退団されるか分からないからこそ観れるときに観ておきたいね。ありがとうございました。

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