ハイブリッド配信に必須な考え"マイナスワン"を整理する
今回のテーマはライブ配信の音声に関わるお話。
ハイブリット形式の配信に必須となる「マイナスワン」という考えを整理します。
ハイブリット配信はそれ以外の形式に比べて複雑な構成や考え方になります。その大きな要因の一つがこのマイナスワンです。
これからトライする方のご参考になればと思います。
注目が高まっているハイブリッド形式のイベント
近年のイベントではハイブリット形式の開催に注目が集まっています。リアルとオンライン、両方から登壇者が出演するスタイルです。
今もなお感染拡大の状況は変動的ですので、柔軟な出演調整ができることは大きなメリットだと思います。
ハイブリットに必要な"マイナスワン"
一方、配信の機材構成や運用面では、難易度が大きく向上します。
様々な要素がありますが、その一つの大きなものがオンライン出演者への「返し音声」です。返し音声とは、オンライン出演者に送るリアル会場の音声を指します。
当たり前のようですが、これが少し工夫の必要なポイントになります。なぜかと言えば、最終配信と同じ音声ではいけないからです。
オンライン出演者に返す音声ですので、その出演者自身の声は除いた音声である必要があります。つまり、最終配信と同じ音声ではなく、不要な音声を除いた音声系統を用意しなければならないのです。
これを「マイナスワン」と言います。そしてこれが中々に機材構成や運用を複雑にするポイントとなります。
具体的な構成イメージ
では、マイナスワンはどのような構成になるのか。音声の流れを図に表したのがこちらになります。
赤色がリアル出演者、青色がオンライン出演者の音声の流れを表しています。
この図を見てもらうと、ミキサーからは音声が3方向に出力されていますが、その音声は2種類あることが分かります。
スピーカーとスイッチャーには、リアル・オンライン両方の出演者の声が出力されています。一方でオンライン出演者には、リアル出演者の声のみが出力されています。
このように、マイナスワンをするには、少なくとも2種類の音声系統が必要になります。これができるかはミキサーの機能によるため、ハイブリット配信には対応したミキサーを使う必要があります。
マイナスワンができるミキサー
では、このマイナスワンができるミキサーとはどのようなものなのでしょうか。これは大きく2つのポイントがあります。
メイン以外の出力端子がある
一つ目はメイン以外の出力端子があることです。
これは機種にもよりますが、「MONITOR端子」または「AUX端子」になるかと思います。
中には「FX SEND端子」が同じ機能を有している場合もあります。自分が調べた限りでは、FXの方はポストフェーダー、MONITORやAUXはプリフェーダーが選べることもあるようです。
マイナスワンができる
二つ目はその出力端子が、メインとは異なる音声を出力できることです。入力音声から一部だけを除いて出力する、いわゆる"マイナスワン"の機能です。
では、このマイナスワンは実際にどのように操作するのでしょうか。例えば、YAMAHAのアナログミキサー「MG10XUF」は、"FX SEND"のツマミを回して操作します。これを回した音声だけが、FX端子から出力されます。
どちらのポイントも機種によってタイプがあります。事前によく仕様を理解して選定する必要があると言えます。
機種の一例
最後にマイナスワンができるミキサーの中でも、比較的小規模・名前を聞く機種を紹介します。
ミキサーにはアナログとデジタルの大きく2種類があります。
デジタルの方がソフトウェア的に処理する分、比較的コンパクトで多機能です。しかし、代わりに操作体系が複雑になるデメリットもあり、それぞれの良し悪しがあります。
アナログミキサー
アナログタイプのミキサーでは、例えば以下の2機種が比較的小規模な機種です。
MG10XUFはFX出力が1系統搭載、QX1204USBはAUXとFXの2系統が用意されています。
デジタルミキサー
デジタルタイプのミキサーは、有名は「Zoom L-8」や先日レビューした「Behringer Flow 8」などが比較的小規模向きのミキサーです。
Zoom L-8は3系統のMONITOR出力が搭載されていますが、これはポストフェーダーではないことに注意が必要です。4極ミニプラグをうまく使う方法もあるのですが、少し制約が生じた使い方になることは理解が必要でしょう。
ポスト・プリについては、先日書いたnoteも参考になればと思います