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YAMAHA MG10XUを使ったハイブリッド配信を考える【後編】

今回のテーマはヤマハのアナログミキサー「MG10XU」です。

以前からハイブリッド配信のミキサーとして使えるのか、また初心者にオススメできるものなのか興味がありました。

前編では、そもそもハイブリット配信に必要な要件を整理して、MG10XUが理想的な機材ではない、という結論まではお伝えしました。

後編では、具体的にMG10XUのどんなポイントが良くなかったのかを紹介していきます。


音声の流れ

前回の記事では、MG10XUをハイブリット配信に使う音声フローとして、こちらの図を掲載しました。

後編はこの図を前提に、なぜこのフローになるのかを説明していきたいと思います。MG10XUの仕様を考慮すると、この流れにしかならないかなという印象です。

公式マニュアルのブロックダイアグラム図を参考にしていますが、初心者の方を意識して独自の書き方をしている部分もあります。ご了承ください。

そもそもMG10XUの基本スペック

まだMG10XUの基本的なスペックを紹介していなかったので、今更ですが紹介をさせてください。

音声入力

まず音声の入力は10チャンネルあります。4つのバランス入力のコンボジャックを搭載し、内2つはファンタム電源の供給が可能です。

また、6つのアンバランス入力のフォーン端子を搭載。その内4つはRCA端子から、2つはUSBからも入力が可能です。

MG10XUの音声入力に関わる端子類

音声出力

出力は大きくSTEREO OUT/FX SEND/MONITOR/PHONES/USBの5種類の端子があります。

個人的に注目なのは、FX SENDとMONITOR OUTが「インピーダンスバランス」なことです。恥ずかしながら、このミキサーで初めてその存在を知りました。詳細はヤマハのヘルプをご覧ください。

FX SEND

MG10XUには、AUXオグジュアリーとして使えるFX SEND端子が搭載されています。各チャンネルにはFXのツマミがあり、これで出力した音声のみがFX SENDより出力されます。

FXと名は付いていますが、内蔵エフェクター機能をOFFにすれば、一般的なAUXとして使うことが可能です。

その他

MGシリーズの中では比較的コンパクトな機種ですが、故にボタンや機能が省略・兼用されている印象です。例えば、上位の機種でチャンネルごとのON/OFFボタンや、AUXのプリ・ポスト切替などもあります。

結果的には、この省略がハイブリット配信には制約を生む結果となっていました(詳しくは後述)。

ポイント

では、ハイブリット配信でMG10XUを使うために、考えなければいけないポイントを紹介していきたいと思います。

①USB入力の仕様

最初のポイントはUSB入力に関する仕様です。MG10XUはUSBからの入力を、STEREO OUTかMONITOR OUTのいずれかにしか送ることができません

そもそもUSBからの音声は、9/10チャンネルのスイッチをONにすると入力ができます。ハイブリット配信の場合、Web出演者の音声を入力するためには、ここが必須でONになるはずです。

ただし、この9/10チャンネルは、出力先がSTEREO OUTまたはMONITOR OUTのいずれかのみとなります。同時に両方へ送ることはできず、排他的な関係性です。

そのボタンが「TO MON/TO ST」ボタンです。

音声のフロー図でこれを表していたのが、以下のピンク色の箇所となります。ここでスイッチとして切り替わり、STEREO OUTかMONITOR OUTのいずれかにしか送られません。

②USB出力の仕様

次のポイントはUSBの出力に関する仕様です。

USBから出力できる音声はSTEREO OUTの音声のみとなります。そのため、①と併せて考えると、「TO MON/TO ST」スイッチは「TO MON」にしなければいけません。

なぜなら、「TO ST」にするとUSB入力の音声がUSB出力にも送られてしまうからです。これはWeb出演者が自分の声が聞こえる状態となってしまいます。

例えばBehringer Flow8では、USBから複数の音声チャンネルを出力することができます。これを活かして、Windowsなら最小構成のハイブリット配信ができることが、以前のオフ会では話題になりました

MG10XUのUSB OUTは2チャンネルのミックス音声なので、残念ながらそういった芸当はできません。そのため、メイン出力のSTEREO OUTを他で活用できないのは残念に感じた点でした。

③MONITOR OUTとPHONESの調整ツマミが兼用

最後に最大のポインになるのが、MONITOR OUTとPHONESの調整ツマミが兼用ということです。

これにより、会場スピーカーでは丁度良い音量でも、ヘッドフォンで確認するには大きい・小さ過ぎる、と言うケースが生まれる可能性があります。

前編でも書いた通り、ヘッドフォンまたは会場スピーカー側で音量調整ができれば問題なく運用が可能です。実際のところ、会場スピーカー側で調整できることは多いのではないかと思います。

ただ、そういった外部要因に依存してしまうのは、単体の機材としてベストな仕様ではありません。なので、ハイブリット配信で使うこともできるけれど、注意点が必要な機材という位置付けになりました。

MG12XUなら大丈夫

以上、YAMAHA MG12XUがハイブリット配信では、理想の機材ではない理由の説明でした。

ただ、YAMAHAのMGシリーズが全て同じかと言えばそうではありません。どうやら一つ上位モデルの「MG12XU」であれば、これまで挙げたも問題は解決するようです。

YAMAHA MG12XU

コミュニティメンバーの竹中さんが実際に使われており、MG12XUならMONITOR OUTとPHONESの音量調整ツマミな、別々になっていることを教えていただきました。

また、ブロックダイアグラム図を見る限りでは、「TO MON/TO ST」という排他的なボタン制御はないように思えます。そもそもAUX出力がもう一つ増えるので、いかようにもできそうですね。

ちなみに、MG12XUはフェーダーモデルですが、ツマミモデルの「MG12XUK」は問題が解決されていません。入力チャンネルが増えただけで、上に挙げた仕様は同じようです。

まとめ

ということで、YAMAHAのアナログミキサーをハイブリット配信で使う場合は、MG12XU以上のモデルがオススメ、というのが私の結論になりました。

MG10XUでもできちゃうのですが、注意するポイントがあるよというお話となります。個人的には比較的コンパクトなMG10XUで完璧ではなかったのは残念な点です。

一方、今回初めてアナログミキサーをガッツリと検証してみました。それにより、デジタルミキサーのコンパクトさと複雑さを実感することができました。

この学びをまた活かして、これからも発信していきたいと思います。また、機会があればMG12XUも触ってみたいと思います!

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