iPhone・iPadでラウドネス計測を考える<後編> 〜iOSアプリ「Youlean Loudness Meter Lite」の活用〜
今回のテーマはラウドネス。iPhone・iPadで配信のラウドネスを測る方法を考えます。
きっかけは、PCで有名なラウドネス計測ソフトにiOS版があることを知ったことでした。これを使えば比較的手軽に配信のラウドネスを測れるのではと思い、色々と検証を始めてみました。
今回は後半として、実際に計測できた構成や、その結果見えてきた課題や実用性などを紹介していきます。
前編の記事
この記事は後編です。前編では前提となるラウドネスについてや、アプリの概要を紹介しています。
まだの方は、ぜひ前編からご覧ください。
iPadに音声を入力する
前回もお伝えした通り、iOS端末に外部音声を入力するためには、対応したオーディオIFが必要となります。
色々と探してみた結果、「iRig Stream」が一番コンパクトで安価なオーディオインターIFだと思い購入してみました。15,000円ほどの機材です。
音声はRCA(赤白のピン端子)で音声入力ができ、iPhone用にライトニング・iPad用にUSB-Cの両方で出力が可能です。
HDMIから音声を取り出す
もう一つ、配信音声の取り出しには「HDMI映像音声分離器」を使います。これは入力したHDMI映像から、音声だけを取り出せる機材です。
今回はAmazonで¥2,000の「Neoteck HDMIオーディオ分離器」です。RCAまたは光デジタルケーブルで出力することができます。
入力したHDMI映像はパススルー出力もしてくれて、音声もそのまま載っています。なので、映像スイッチャーのHDMI出力を繋げていくイメージですね。
例えばATEM miniのHDMI出力を繋げて、音声分離器からRCAで出力し、オーディIF(iRig Stream)経由で、iPadに入力する想定です。
ラウドネス計測に成功
結論から書くと、YouTubeを基準に計測テストを行い、この構成でラウドネスを計測できることを確認しました。
計測テストにはYouTubeで適当に検索した1分間の演奏動画を使いました。YouTubeの動画は右クリック > 詳細統計情報で、その動画のラウドネス値を確認することができます。
今回の動画のラウドネス値には「-2.3db」と書かれています。これはYouTubeの基準が「-14」なので、「-16.3」であることを意味しています。
計測結果がこれと一致すれば、YouTube基準では正しく計測できていると言えます。結果的には、この値と"ほぼ一致"することができました。
音量調整に苦しむ…
なぜ"ほぼ一致"なんて曖昧な表現かと言えば、一つ大きな課題として「音量調整」がありました。
今回使ったオーディオIFの「iRig Stream」は、本体に音量調整の端子があります。計測するには元の音量と同じ音量レベルを探さなければいけません。これが中々に大変な作業でした…。
アナログのつまみだからか、iRig Streamが過敏なのか、ちょっと回すだけで大きくレベルが変わってしまいます。アナログ調整なので、デジタルの用に「0.1dbだけ上げる」といった調整はできません。ひたすら微調整の繰り返しです。
その結果「-0.1〜-0.2db」差まで調整ができました。ピッタリにはできなかったのですが、これより調整しようとすると、また戻すのに苦労します。なので「-0.1~-0.2dbズレている」前提で計測結果を見る必要があります。
本当にズレないのかが心配…
目的を考えれば多少のズレは許容できます。ただ、そのズレの量が毎回変わってくると実用に耐えません。
当たり前ですが、ツマミが動くと結果が変わってしまいます。そのため不恰好ですが、テープで固定をしています。
ただ、これで本当にズレ無いかは怪しいものです。信頼性を保つには、毎回最初にテスト計測をする必要を感じています。この辺りは暫く運用してみなければわかりませんが、ちょっと微妙ですね。
一度HDMIからRCAに変換しているので、音量調整の課題からは逃れられないと想像しています。デジタルデータのままiPadに届けられると良いのですが、今のところ解決策は見つかっていません。。
安価に構成できるが、調整に課題あり
以上、iPhone・iPadを使ったラウドネス計測検証の紹介でした。
結論としては、追加の機材は必要ですが比較的安価に「ラウドネス検証キット」の構成が作れます。iPad・iPhoneで計測できるのは、PCを1台用意するよりも省スペースで手軽だと思いました。
一方で音量調整には課題があり、信頼性の担保には毎回のテストが必要な印象です。これはまぁまぁの手間だと思っていて、パソコンの方が楽だなという話になる予感がしています。
もしくは、以前伊藤さんが導入していた専用ハードウェアの方がこの辺りの確実性はやはり高いと思います。あちらは光デジタルケーブルで音声入力ができるので、調整の課題もないのかなと想像しました。
この辺りは、次回伊藤さんに会った際にはお話を伺ってみたいと思います。
追記:HDMIキャプチャデバイスが使えました
その後の検証で、HDMIキャプチャデバイスを使えば、音量調整に悩むことなくラウドネス計測をすることができました。
ぜひこちらも併せてご覧ください。