【松井の照明探求】トレーシングペーパーの照明って何が良いのか試してみたお話(後編)
今回は自分の検証報告の後編。トレーシングペーパーを使ったライティングに挑戦してみたので、その感想をお届けしたいと思います。
前編ではそもそも光の柔らかさの話から、実際にソフトボックスと比較した様子を紹介しました。
後編では使い勝手や運用の観点から、感じたことをまとめていきたいと思います。
前編はこちら
この記事は後編です。前編では前提情報となる光の「硬い」「柔らかい」の説明も行なっています。
まだの方は、まずはこちらからご覧ください。
柔らかさを調整しやすい
トレーシングペーパー(トレペ)で感じた運用面の良さとして、まずは光の柔らかさを調整しやすいことがありました。トレペと照明の距離を変えると、光の柔らかさを変えることができます。
例えば照明をトレペに近づけると発光面積が小さくなります。照明は光源が小さいほど硬い光に、大きいほど柔らかい光になります。そのため、距離を変えることで光の硬さを変えられるのです。
ただ、遠ざけるほど照明の光は暗くなるので、より明るい照明機材が必要になる点には注意が必要です。
照明を遠ざけた時
照明を近づけた時
実際にトレペと照明の距離を近づけて撮影してみたのがこちら。距離を近づけると光が固くなり、影がくっきりと映っていることがわかります。
個人的に気になるのはメガネの影ですね。これをできるだけ目立たせたくなかったことが、今回の検証の出発地点だったりします。柔らかい光だとあまり気になりません。
トレーシングペーパー(照明遠ざけたver)
トレーシングペーパー(照明近づけたver)
方向調整が大変
逆に運用の面倒さを感じたのは光の方向調整です。
トレペを縦に垂らすだけだと、光は横方向から来ます。被写体に立体感を出すために斜め45度くらいから当てたいのですが、このためにはトレペを斜めに固定する機材が必要になります。
これは結構面倒な作業ですね。実は上の比較写真も、本当はもっと高い角度から光を当てたかったです。ですが、固定する機材がなく諦めた経緯がありました。
照明の角度で調整はしてみたのですが、やはりソフトボックスに比べると角度が浅く、影も長くできていますね。
ソフトボックスは照明に装着するので、照明を傾ければ光の方向も変わります。こういった方向調整の手軽さは、ソフトボックスのメリットだと理解できました。
照らす範囲が広くなる
最後に、一番学びになったのは光の広がり方でした。ソフトボックスよりもトレーシングペーパーの方が、空間が広く明るくなります。
ソフトボックスは方向調整がしやすい一方で、照らす範囲はとても狭いです。例えば横に並んだ演者さんを広く照らす時などは、トレペが使えたりするのかもしれません。
思い出したのは、映像作家 鈴木さんのツイートです。横に並んだ演者さんを照らす照明として、大きな白い面に照明を当てて照らしています。こうやって広い範囲を照らしていくのだなと思いました。
ただ、ここまでくると枠付きの専用機材が使われていますね。さすがに自分の配信では用意できるレベルではないですし、もうトレペの範囲ではないかもしれません😅
光の柔らかさは好きだけど、持ち運びが大変
個人的にはトレーシングペーパーの光の具合はとても好きです。また距離感や方向の調整がソフトボックスよりも柔軟にできる印象です。面が大きいからこその扱いやすさも感じます。
一方で、出先に持っていけるかと言えば厳しいですね。トレーシングペーパー自体が長いですし、固定するスタンドも必要です。固定スタジオ用だなと思いました。
移動を想定すると、折り畳み式のソフトディフューザーが気になっています。コミュニティメンバーのNakajimaさんから教わったもので、これなら持ち運びもしやすそうです。届き次第で試してみたいと思います。
あと広く照らしたいのなら、コミュニティメンバーの伊藤さんが使っていたアンブレラタイプのソフトボックスですね。今回色々と試す中で、改めてこの機材の効率の良さを感じました。
この広さをトレペのようなものにすると、また固定する方法が課題になってきます。こちらなら照明のアンブレラホルダーに挿せば良いので、追加の固定機材を用意する必要がありません。
これが手軽に横に並ぶ演者を照らす最適解だなと、今回の検証を通じて改めて再確認できたのでした。
まとめ
今回の検証を通じて、トレーシングペーパーが作る柔らかい光の魅力や、その度合いを柔軟に調整できる応用性を高さを理解することができました。
一方で運用には必要な機材やスペースが多く、また運搬のコストも大きいです。外に気軽に持ち運ぶものというよりは、固定されたスタジオに向いたものだと思いました。
可搬性や機材効率を考えると、省コストで済ませたい自分にはソフトボックスの方がメリットを感じます。そんな今まで使っていた機材の良さを、改めて理解する機会となりました。