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第二十七話 亀裂


「まぁ、今日ぐらいはいっか」


始まりは些細なことだった。
日課のウォーキングを1回サボったことから始まる。
その心の隙が悪魔を育てるのに最良の環境とも知らずに。


実家に戻ってからも、福知山の時と変わらず運動は続けていた。
食事でも家のご飯をつまみつつ、コーンスープ、ちくわ、納豆の基本スタンスを崩すことはしなかった。
年末のあたりまでは…


言い訳にしかならないが、やはり家に居ると家のペースがある。
食事のタイミングしかりご飯の内容しかり。
以前はタイミングの全てを自分1人で決めていたが、そうはいかない場面がある。
まぁ流された自分が悪いのだが…


そして何より甘えが出たのが最大の問題だった。
朝ごはんは蒟蒻ゼリー2個で固定していたのが、やはり目の前にパンがあると食べたくなる。
以前はそもそも家にそんなものはなく、お腹が減ったり食べたくなるとネットの画像や動画を見て折り合いをつけていた。
それが目の前にある。
手を伸ばすだけで手に入る。
そんな状況で我慢出来るだろうか。
いや、断じて出来ない。
わたしは極めて弱いからだ。


その弱さは運動をも蝕む。
ちょっと気が乗らないだけで、今日はパス。
明日やればええやろ。
そして明日はあいにくの雨。
そしてその次の日は気が乗らずにまたもやパス。
こんな調子が続き始めていた。
向こうの暮らしではウォーキングをしないとある種の気持ち悪さすら感じていたのに。


こうして私はゆるり、ゆるりとダイエット前の私に戻り始めていたのだった。
そして、そのツケは当たり前の如く我が身で清算されることとなる。


次回「決壊(けっかい)」
〜偶然などは介在せず、あるのはただ必然〜


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