第十七話 叡智
「全部俺のことやん」
初めて抱いた感想はそれだった。
顔が急激に熱くなったあの感じは生涯忘れられないだろう。
それだけ心に直接影響させるほどのものだった。
ゲームを禁止して以降、何かと時間を持て余していることに気づいた。
何かもったいないと思った私は短絡的にある結論に至った。
何か出来る人って、本読んでる気がする。
この直感を元に徒歩40分かけてある場所に向かった。
言わずと知れた本のデパート、BOOKOFFである。
今までの人生で踏み入れたことのない世界であり、率直に本の多さに圧倒された。
振り返ってみると、私の人生は本とは無縁であった。
漫画もあまり読まず、子供の頃から読んだことがあるのはゲームの攻略本くらいだった。
何を読めば良いのか全く分からなかった。
それは運命としかいえない、そんな感覚だった。
導かれるようにあるコーナーに誘われた。
それは、ビジネス書並びに自己啓発書のコーナーだった。
仕事を辞めてから読み始めるんかいと自分にツッコミを入れつつ、3冊の本を買った。
好きなことだけする、周りと比べない、自分らしく生きる、そんな感じのタイトル。
作者のことなんて何も知らない。
ただ、本能のままに選んでいた。
帰宅後、早速読んでみる。
言い訳しない、不貞腐れない、根拠をいちいち聞かない…
そこにはかつての自分の姿を見てきたかのような事が書かれていた。
あまりに恥ずかしくなった私は思わず本を放り投げ、その日もその次の日も読むことが出来なかった。
ただそこは倹約家気質な自分。
もったいないと思い、再度読み始めた。
そしてあることに気づいた。
確かに自分の悪い部分も沢山書いてあるがそれだけではないと。
私はそんなに仕事が出来る方では無かったが、嫌われずに上手くやれていた。
その理由がそこには書かれていた。
そこからは本当に早かった。
2日で3冊を読み切り、また買いに行く、そして読んではまた買いに行く。
完全に活字中毒になっていたのである。
そしてある日、確信した。
本の内容はダイエットにも活用出来ると。
そこから私のダイエットは目まぐるしく加速することなったのである。
次回「神技(しんぎ)」
〜我が道は我流、我流は無形、故に自由〜