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頭痛と寝不足には勝てないんだよ……【物語・先の一打(せんのひとうち)】39

「致命的に寝てないぞ」高橋は三人分のおにぎりを手早く用意しながら言った。「四郎、今日の仕事の予定は」

「午前中宮垣先生んとこ。午後会社に戻って、土田さんと打ち合わせ」
「組み替えなくても行けそうか」
「俺は平気」

「僕はだめだ」高橋はあぶったのりをきれいにおにぎりに巻きながら、二、三度、目をしばたいた。「頭痛と寝不足には勝てないんだよ……今すでに、ロシアのラジオみたいな幻聴が……」

「そらあかんな」四郎は立ち上がって、高橋がむすんだおにぎりを食卓に持ってきた。「俺のひっかかりにつきあってくれて、悪かったて……」

「あれ自体は至極よかった」高橋は指についたごはんをこじり取りながら、そう言った。「すばらしい日蝕の太陽のレリーフだった……それに、僕自身が持ってた、判断ミスでビキっとショックを受けるような感じとか、やっちまった罪悪感とか、そんなものが一緒に抜けたかもしれないな、全部は抜けてなくてもやわらいだだろうな、という気分がしている。あれはとてもよかった……」

おにぎりを食べる四郎と奈々瀬を見ながら、高橋は電話をかけた。「……中さん? ごめん今日さあ、僕十四時出社でいいかなあ。午前中の予定、まるっと明日にリスケお願いできると助かる。はい。はい。あ、それは光洋の浦沢さんが直接見れるから、ええと、後藤ちゃんに連絡頼んでみて。中さんが自分でやらないほうがいい。うん。じゃあ十四時。助かります」

そして高橋は、嬉しそうに言った。「寝てくる!」

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高橋照美
「最大値の2割」ぐらいで構わないから、ご機嫌でいたい。いろいろあって、いろいろ重なって、とてもご機嫌でいられない時の「逃げ場」であってほしい。そういう書き物を書けたら幸せです。ありがとう!