女子高生に説教される不浄霊群が、ちょっとうらやましい。ーー秋の月、風の夜(44)
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「それが代々重なって、自分でも人が離れていく前提持ったまま対策して絶望して、不自然な接し方であれこれしちゃって、結果うとんじられちゃってたの。
でも高橋さん奥の人さんの親友でしょ。私も友達でしょ。
だからみんなが嫌うっていうのは勝手な解釈。生きてたとき頭でいろいろ考えたでしょ。脳って意味づけしないとおちつかないつくりだから、なんか理由つけちゃうの。
はじめの一人が気分の沈むイミをつけておちついちゃうと、次世代へ全員、そうだからしかたないよねーってコピーして行っちゃうの。で、ああはなりたくないって反対に振れて、ますますややこしくするの。
だったら、はじめの一人がひどい状況でうっかりつけたしんどい解釈は仕切り直して、自分に都合のいい解釈に変えたほうが、四郎も奥の人さんもすごしやすいのね。勝手な解釈が残ってると、くりかえし絶望しちゃうし、解釈どおり人を無闇に遠ざけようとしちゃう。
二重三重に曲がりくねってふりだしに戻ってるぶん、全部いらないから。何にも意味づけのない能天気な状態まで、全捨てね」
奈々瀬が一生懸命、奥の人に説明する。まっすぐ通じる前提で。
そして本当に、まっすぐ通じている。
――そうなんか。いらんな……
(奥の人がうれしそうだ)高橋は、結構ぼけーっと観察していて、ふと我に返った。(奈々ちゃん……ほぼオールジャンルで、骨抜きバッチコイだな……こんなに嬉しそうな室町時代人は、もしかすると出会って以来はじめてじゃないか)
――いちいちうるさいわ
急に奥の人に叱られて、高橋はぎょっとした。
(すんません)
謝りつつも、高橋は、奥の人のエネルギーハンドリングが違ってきたことに気づいた。(こちらへの出力を細く絞ることが、できるようになっている……やればできる子じゃん!)
――うるさいて
奈々瀬がぴしっという。「奥の人さん自分に集中。高橋さんを構ってたら、自嘲や恨み消えないでしょ!やることやってから遊んで。意識こっち」
――はい
「奥の人さん、総量がむやみに大きいのに、ところどころ反応が子供みたい。全員、死んだの、はたちすぎでしょ?今の私より、長生きしたんでしょ?気の散り方、ちょっと幼くない? 自分でも困ってた?」
――目の向けどころ、生まれてからずっと、こんなんやった
「気の散り方の幼さも反応だから。一番最初をおっかけて。もっともっと奥。もっと先。ポイントする気配は、たまたま危険だった環境で、生き延びるためにまわりをきょろきょろしてる、不安と恐怖のかたまったさらに奥。危険を過敏にサーチしてる、爬虫類脳の、そこ」
――こいつか!